2.3 BERT, GPT, T5などの代表的なLLMモデルの解説 | 自然言語処理タスクへの応用

2.3 BERT, GPT, T5などの代表的なモデル
LLM(大規模言語モデル)の分野には、いくつかの代表的なモデルがあり、それぞれが異なる自然言語処理(NLP)タスクに特化しています。 特に、BERT、GPT、T5はLLMの発展を象徴するモデルであり、独自のアプローチで言語理解と生成に大きく貢献しています。 ここでは、これらのモデルの違いと使用例について解説します。
前のセクション「注意メカニズム:自己注意とマルチヘッドアテンション」では、 トランスフォーマーモデルの注意メカニズムについて説明しました。 このセクションでは、その技術を基盤とするBERT、GPT、T5について、各モデルの特徴と使用例を詳しく見ていきます。
BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)
BERTは、Googleが開発したLLMで、双方向の文脈を同時に理解できる点が特徴です。 従来のモデルは文の前方(過去)のみを捉える「単方向」アプローチが一般的でしたが、BERTは文の前後関係を同時に把握する「双方向」モデルを採用しています。 これにより、文脈の意味をより深く理解し、高精度な結果を出すことが可能です。
- 主な用途: 質問応答、感情分析、文の分類など
- 特徴: 文脈全体を捉える双方向性
- 例: 文章中の特定の単語をマスクし、その単語を予測する事前学習タスク(マスク付き言語モデル)
GPT(Generative Pre-trained Transformer)
GPTシリーズは、OpenAIが開発したLLMで、主にテキスト生成に特化しています。 GPTの特徴は、文の前方のみを考慮する「単方向」モデルであり、一部の文章を与えると、その続きを自然な形で生成します。 特にGPT-3は、1750億のパラメータを持つ巨大なモデルで、複雑な文章や対話の生成が可能です。
- 主な用途: テキスト生成、対話システム、翻訳、クリエイティブライティングなど
- 特徴: 単方向性、巨大なパラメータ数
- 例: ユーザーが入力した一部の文章をもとに、長文のストーリーや詩などを生成
T5(Text-to-Text Transfer Transformer)
T5は、Googleが提案したLLMで、すべてのNLPタスクを「テキスト変換問題」として捉える点が特徴です。 T5は、入力をテキストとして受け取り、出力もテキストで返すという統一的なアプローチを採用しています。 このため、質問応答、翻訳、要約など、さまざまなタスクを一貫した形式で処理できます。
- 主な用途: 翻訳、要約、質問応答、文書生成など
- 特徴: すべてのタスクをテキスト変換として扱う一貫したフレームワーク
- 例: 英語の文章を入力して、日本語に翻訳するなど、タスクを同じモデルで処理可能
これらのモデルは、それぞれ異なるNLPタスクに特化しており、プロジェクトの目的に応じて最適なモデルを選択することが重要です。 BERTは高精度な文脈理解に優れ、GPTは自然なテキスト生成で強力、T5は多用途に対応する柔軟性を持っています。 エンジニアにとって、これらのモデルの選定はプロジェクトの成功を左右する重要な要素です。
第3章「LLMのトレーニング:データ前処理とファインチューニング」では、 これらのモデルをより効果的に利用するためのデータ前処理とファインチューニングの手法について解説します。 これにより、特定のタスクに合わせた最適なパフォーマンスを引き出す方法を学びます。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。検索履歴
チーム

任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。