3.0 LLMのトレーニング方法 | データセット、前処理、ファインチューニングの解説

3.0 LLMのトレーニング方法
LLM(大規模言語モデル)の性能を最大限に引き出すためには、適切なトレーニング手法が不可欠です。LLMのトレーニングには膨大な計算リソースとデータが必要であり、そのプロセスは複雑です。この章では、LLMをトレーニングする際に必要なステップや技術的なポイントについて解説します。
前のセクション「BERT、GPT、T5などの代表的なモデル」では、代表的なLLMモデルの特長と使用例について説明しました。この章では、LLMを実際にトレーニングする際のデータ準備やステップ、さらに特定タスクに合わせた調整方法について詳しく見ていきます。
3.1 データセットと前処理
LLMのトレーニングには、膨大かつ多様なデータセットが必要です。一般的に、ニュース記事、書籍、ウェブサイトのコンテンツなど、公開されている大量のテキストデータが使用されます。ただし、データの前処理は重要なステップです。不要なノイズ(誤字、重複、広告など)を除去し、トークナイゼーション(単語やフレーズを小さな単位に分割すること)を行い、モデルが効率的に学習できる状態に整える必要があります。
3.2 トレーニングステップの概要
LLMのトレーニングは、以下のステップで進行します。
- 1. 初期化: モデルのパラメータはランダムに初期化され、初期状態でのテキスト予測能力はありません。
- 2. フォワードプロパゲーション: 入力データ(テキスト)をモデルに通し、出力(予測)を得ます。
- 3. ロス計算: 出力された予測と正解データとの誤差(ロス)を計算します。
- 4. バックプロパゲーション: ロスを最小化するように、モデルのパラメータを調整します。これが、モデルが学習するプロセスです。
- 5. 繰り返し: このプロセスを繰り返し行うことで、モデルがより精度の高い予測を行えるようになります。
これらのステップを大量のデータセットを使って何百万回と繰り返すことで、モデルは徐々に文脈理解や予測能力を向上させます。このトレーニングには、数週間から数ヶ月に及ぶ計算時間と大規模な計算リソースが必要です。
3.3 ファインチューニングとトランスファーラーニング
ファインチューニング(Fine-tuning)とは、すでにトレーニングされたLLMに対して、特定のタスクに適応させるための調整プロセスを指します。一般的に、大規模な一般的データセットでトレーニングされたモデルをベースに、少量のタスク固有のデータでファインチューニングを行うことで、精度を向上させることができます。これにより、特定の質問応答システムや翻訳タスクに最適化されたモデルが得られます。
トランスファーラーニング(Transfer Learning)は、既存のトレーニング済みモデルを他のタスクに転用する技術です。例えば、BERTやGPTのようなモデルは、あらかじめ膨大なデータセットで学習されており、様々なNLPタスクに応用可能です。これにより、ゼロからモデルをトレーニングするよりも少ないデータや時間で高精度のモデルが作成できます。
LLMのトレーニングは非常に計算コストが高いため、トランスファーラーニングやファインチューニングの活用は、エンジニアにとって効率的かつ現実的な手法となっています。この手法を用いることで、特定の用途に最適化された高性能なモデルを迅速に構築することができます。
次のセクション「LLMのデータセットと前処理」では、トレーニングに先立ってデータを整備するためのデータ前処理やトークナイゼーションの重要性について詳しく解説します。適切なデータ準備によって、LLMのパフォーマンスを最大化する方法を学びます。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。検索履歴
チーム

任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。