3.2 LLMのトレーニングステップ | フォワードプロパゲーションとバックプロパゲーションの解説

3.2 トレーニングステップの概要

LLM(大規模言語モデル)のトレーニングは、計算リソースと時間を大量に消費するプロセスですが、その成果として高度な言語理解と生成が可能になります。トレーニングは一連のステップで進行し、各ステップがモデルの学習能力に大きく影響します。ここでは、LLMのトレーニングで実行される基本的なプロセスについて解説します。

前のセクション「データセットと前処理」では、LLMのトレーニングに必要なデータセットの準備やトークナイゼーションの重要性について説明しました。このセクションでは、具体的なトレーニングステップを通じてモデルがどのように学習を進めるかを見ていきます。

1. 初期化

モデルのトレーニングは、パラメータの初期化から始まります。LLMの内部には数百万から数十億に及ぶパラメータがあり、これらはランダムな値で初期化されます。初期状態では、モデルはまだ何も学習しておらず、テキストの予測精度は非常に低いです。初期化は、後の学習プロセスを通じてモデルが最適なパラメータに調整されるための出発点です。

2. フォワードプロパゲーション

トレーニングプロセスの次のステップは、フォワードプロパゲーション(順伝播)です。入力データ(テキスト)がモデルに渡され、モデルが予測を生成します。このプロセスでは、各層を通過してデータが処理され、最終的な出力が得られます。たとえば、テキスト生成の場合、入力された文に続く単語を予測するというタスクが実行されます。

3. ロス計算

モデルの予測が出力された後、ロス(損失)関数を使って誤差が計算されます。ロスは、モデルの予測結果と実際の正解データとの間の差異を示します。ロスが大きいほど、モデルの予測は正確でないことを意味します。LLMのトレーニングでは、クロスエントロピー損失関数がよく使用され、これはモデルの予測が正解とどの程度一致しているかを評価するための標準的な手法です。

4. バックプロパゲーション

次に、バックプロパゲーション(逆伝播)によってモデルのパラメータが更新されます。ロスの値を基に、モデルのパラメータに対して勾配降下法(Gradient Descent)が適用され、パラメータが修正されます。このプロセスにより、モデルは予測を徐々に改善し、学習が進んでいきます。バックプロパゲーションは、学習の中心的な役割を果たし、モデルが正確な予測を行うように最適化されます。

5. エポックの繰り返し

これらのプロセスは、エポック(epoch)と呼ばれる単位で繰り返されます。1つのエポックは、モデルがトレーニングデータ全体を一度処理することを意味します。一般的に、LLMのトレーニングでは、複数のエポックが必要です。エポックごとにパラメータが微調整され、モデルの予測精度が向上していきます。ただし、エポックを増やしすぎると、過学習(オーバーフィッティング)のリスクがあるため、バランスが重要です。

学習率とハイパーパラメータの調整

トレーニング中に重要な要素の1つは、学習率(Learning Rate)です。学習率は、モデルのパラメータをどの程度修正するかを決定します。学習率が高すぎると、最適なパラメータに到達する前に振動してしまい、逆に低すぎると学習が遅くなります。最適な学習率の設定は、トレーニングの成功に直結します。また、バッチサイズドロップアウト率などのハイパーパラメータも調整が必要です。

LLMのトレーニングは、このように多段階で繰り返し実行されるプロセスです。トレーニングを最適化するためには、ロス関数の適切な選択、学習率の調整、ハイパーパラメータの微調整が重要な役割を果たします。これにより、モデルは最適な予測精度を達成します。

次のセクション「ファインチューニングとトランスファーラーニング」では、トレーニング済みのモデルを特定のタスクに適応させるための方法について解説します。効率的に精度を高めるための手法として、ファインチューニングやトランスファーラーニングがどのように活用されるかを学びます。

公開日: 2024-09-13
最終更新日: 2025-01-29
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下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。