3.3 ファインチューニングとトランスファーラーニング | LLMの効率的なトレーニング方法

3.3 ファインチューニングとトランスファーラーニング
LLM(大規模言語モデル)は、膨大なデータと計算リソースを使用してトレーニングされますが、すべてのタスクに対してゼロからトレーニングを行うのは現実的ではありません。そこで、多くのケースでは、ファインチューニングとトランスファーラーニングの技術が活用されます。これらの手法により、既にトレーニング済みのモデルを特定のタスクに適応させることができます。
前のセクション「トレーニングステップの概要」では、LLMのトレーニングプロセスの各ステップについて詳しく説明しました。このセクションでは、既存のトレーニング済みモデルを活用して効率的に特定のタスクに対応させるためのファインチューニングとトランスファーラーニングについて解説します。
ファインチューニング(Fine-tuning)とは
ファインチューニングは、既にトレーニングされたLLMを特定のタスクやデータセットに合わせて微調整するプロセスです。通常、LLMは広範な汎用的なデータでトレーニングされますが、その後、特定のニーズに応じてさらに学習させることが必要になります。これを行うことで、モデルはタスクに特化した能力を持つようになります。
- 例: BERTをニュース記事分類用にファインチューニングして、特定のニューストピックを自動分類できるようにする。
- プロセス: 一般的なトレーニング済みモデルをベースにして、特定のデータセットで再トレーニングを行います。これにより、モデルの重みやパラメータが特定のタスクに最適化されます。
- 利点: 少量のデータと短期間のトレーニングで、タスク固有の高精度モデルを構築できます。
トランスファーラーニング(Transfer Learning)とは
トランスファーラーニングは、既存のモデルが持つ知識を別の関連するタスクに転用する技術です。LLMは膨大なデータで事前にトレーニングされており、さまざまなタスクに適用できる「一般的な言語理解力」を備えています。トランスファーラーニングを使用することで、ゼロからモデルを構築するよりも効率的にトレーニングが進められます。
- 例: GPT-3を使って、製品レビューの要約を生成するタスクに転用する。
- プロセス: 既存のモデルに対して、軽微な調整やファインチューニングを行うことで、新しいタスクに適応させます。元のモデルの基本的な言語理解能力は維持され、新しいタスクに応じた学習が追加されます。
- 利点: 大規模なデータセットやリソースを必要とせず、トレーニング済みの知識を活用して迅速に新しいタスクに対応できます。
トランスファーラーニングとファインチューニングの違い
ファインチューニングは、特定のタスクに対してモデルをさらに学習させる手法であり、既存のモデルを微調整して新しいデータセットに最適化します。一方、トランスファーラーニングは、既に学習された知識を活用して、全く別のタスクに適応させるプロセスです。両者はしばしば併用され、汎用的なモデル(例:BERT、GPT)をトランスファーラーニングで別のタスクに適用し、その後、特定のタスクにファインチューニングするというアプローチが一般的です。
トレーニング時間とリソースの節約
LLMのトレーニングは非常にコストがかかるため、ファインチューニングやトランスファーラーニングは実用的な選択肢です。これにより、トレーニング時間と計算リソースを大幅に節約できるだけでなく、モデルをより迅速に特定の用途に適応させることができます。多くのエンジニアリングチームにとって、これらの手法はプロジェクトの効率化に欠かせないツールとなっています。
ファインチューニングとトランスファーラーニングは、既存のトレーニング済みモデルを活用して新たな価値を生み出す強力な手法です。特に、LLMのような大規模モデルでは、これらの技術を使うことで、少量のデータで高度なタスクに対応することが可能となり、プロジェクトのスピードと精度を向上させることができます。
第4章「LLMの応用:テキスト生成と質問応答」では、LLMが実際にどのようなタスクに使用されているか、その応用例について紹介します。具体的な使用例を通じて、LLMの実務での有用性を確認しましょう。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。検索履歴
チーム

任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。