LLM Primer IV — MCPで設計するAI認知: シリーズ紹介とインデックス
「エージェントの実力は、見えているコンテキスト、届くツール、運べる記憶の質で決まる」。LLM Primerシリーズ第4作 — そして付属のウォークスルーへようこそ。これから14日間、1章につき1本のペースで、Model Context Protocol と、その上に成り立つ認知層を開いていきます。エージェントシステムが静かに動くか、静かに壊れるかを分ける判断を、章ごとに見ていきます。
なぜ本書があるのか
シリーズ第I巻、第II巻、第III巻では、モデルそのものと、その周りの検索装置を扱ってきました。第I巻はLLMの姿を平易に語り、第II巻は数学の輪郭を描き、第III巻はRAGの本番アーキテクチャを歩きました。第IV巻が扱うのは、モデルに「動いてもらおう」とした瞬間に立ち上がる外側 — ツールを呼ばせ、ターンをまたいで状態を保ち、他のエージェントと協調させ、それを四半期ごとに統合グルーを書き直さずにやる、という話です。
2025年に崩れたパターンが、モノリシックなエージェントでした。長いシステムプロンプト、一握りのツール、一つのコンテキストウィンドウにすべての関心事を吸収させる。デモは動きました。本番では、プロンプトが伸び、ツール面が広がり、新しいモデルが出るたびにアダプタコードを書き直すうちに、ほつれていきました。診断は複数の角度から同じ場所に収束しました — コンテキストの希薄化、指示の衝突、N×Mの統合行列。指している答えはひとつ、モデルの下に置く「プロトコル層」です。エージェントが事前合意なしに能力を発見し、セッションを交渉し、ツールを組み合わせられる層。
その層がModel Context Protocolです。本書はこれを正直に、層ごとに歩きます。MCPがすべてのエージェントの問題を解くと約束するつもりはありません。最後まで読むと、プロトコルが何を与え、何を与えないか、その上に積んだどのパターンが本番に耐えるかが見えるようになっている — そこを約束します。
誰に向けて書いたか
エージェントシステムを作るエンジニア、スコープを切る技術寄りのPM、そしてその選択をセキュリティレビューで弁護することになるアーキテクトに。第I巻のLLMの振る舞いの全体像と、第III巻の検索の組み立てになじみがあると読みやすい一方、第II巻の数学は前提にしません。重心は工学側にあります — どこに失敗が住んでいるか、どの判断が後戻りでき、どの判断がチームを数年縛るか。
読み方
初期の読者で機能した読み方は3つです。前から順に、これからMCPベースのエージェントを作るなら、判断が実際に到着する順番でプロトコルを追えます。リファレンスとして、運用中のシステムで特定の層が痛むとき — 例えばトランスポート章、メモリ章、セキュリティ章はそれぞれ単独で立ちます。アーキテクチャレビューの脇に置く、という読み方もあります。デプロイトポロジを決める前に、チームで話すべき会話のきっかけとして、章を使う。
14章を通しで歩く
| 日付 | 章 | 扱う判断 |
|---|---|---|
| 3/30 | 第1章 — AI統合の危機 | モノリシック・エージェントが壊れる理由とN×M問題 |
| 3/31 | 第2章 — MCPの正体 | Host・Client・Serverの三役割と動的ディスカバリ |
| 4/1 | 第3章 — サーバープリミティブ | Resources・Prompts・Tools の使い分け |
| 4/2 | 第4章 — クライアントプリミティブ | Sampling・Roots・Elicitation とホスト境界 |
| 4/3 | 第5章 — トランスポート/ディスカバリ | stdio・Streamable HTTP・.well-known 層 |
| 4/4 | 第6章 — オーケストレーションの基本 | 逐次パイプラインと並行スキャッタ・ギャザー |
| 4/5 | 第7章 — 高度な協働・動的パターン | ラウンドテーブル・ハンドオフ・マジェンティック |
| 4/6 | 第8章 — デプロイメント・レイアウト | Strict Purity・Reusable Agents・Hybrid の選び方 |
| 4/7 | 第9章 — 注意の予算管理 | MCP・RAG・ファインチューニングの選択軸 |
| 4/8 | 第10章 — 長期タスクの記憶 | 短期・長期記憶と圧縮技術 |
| 4/9 | 第11章 — 攻撃面とプロトコル脆弱性 | Confused Deputy・Token Passthrough・Session Hijacking |
| 4/10 | 第12章 — プロトコルの堅牢化 | 4つの防御クラスタ(暗号・OAuth・サンドボックス・HITL) |
| 4/11 | 第13章 — フレームワークとクラウド | Strands・Bedrock・MAF・LangChain・Semantic Kernel |
| 4/12 | 第14章 — ベンチマーク・テスト・性能 | MCP-Universeと運用パターンの10倍差 |
表: 14 日間・14 章の投稿カレンダー
本書とシリーズについて
LLM Primer シリーズは、エンジニアや創業者から、ときに規制関係者からも繰り返し受けた問いへの長い答えです — このシステムは実際どう動いているのか、負荷に耐えるものを作るには何がいるのか。第I巻が形を、第II巻が数学を、第III巻がRAGの本番アーキテクチャを与えました。第IV巻はその上に座る認知層を扱い、第V巻(進行中)は実世界のLLMアプリケーションをエンドツーエンドで組み立てます。
明日、第1章でお会いしましょう。