2.1 トランスフォーマーモデルの説明 | 自己注意メカニズムとエンコーダー・デコーダー構造

2.1 トランスフォーマーモデルの説明

トランスフォーマーモデルは、LLM(大規模言語モデル)の中核となるアーキテクチャです。2017年にGoogleが発表した論文「Attention is All You Need (PDF)」で提案され、自然言語処理(NLP)に革命をもたらしました。それまでのリカレントニューラルネットワーク(RNN)や長短期記憶(LSTM)モデルに比べ、トランスフォーマーは効率的かつスケーラブルな言語モデルを実現しました。

前のセクション「LLMの基礎:トランスフォーマーとアテンション」では、トランスフォーマーの背景を解説しました。 ここでは、トランスフォーマーモデルの構造や自己注意メカニズム、エンコーダー・デコーダーアーキテクチャについて詳しく解説します。

シーケンス処理の限界を克服

従来のRNNやLSTMは、入力データを逐次的に処理するため、長い文脈の依存関係を捉えるのが困難で、計算効率も低いという課題がありました。 これに対し、トランスフォーマーモデルはシーケンス全体を一度に処理できるため、並列処理が可能であり、計算速度と効率が大幅に向上しました。 長い文章の理解や複雑な構造のデータ処理においても、これが画期的な進展となりました。

エンコーダー・デコーダーアーキテクチャ

トランスフォーマーモデルの基本構造は、エンコーダー・デコーダーアーキテクチャに基づいています。 - エンコーダー: 入力シーケンスの意味を捉え、特徴を抽出します。 - デコーダー: エンコーダーから得られた情報を基に、新しいシーケンスを生成します。

この仕組みは、機械翻訳や要約タスクなど、入力から出力を生成する多くのNLPタスクにおいて非常に効果的です。

自己注意メカニズムの活用

トランスフォーマーの革新の中心にあるのが、自己注意メカニズム(Self-Attention Mechanism)です。 このメカニズムにより、モデルはシーケンス内の各単語が他の単語とどの程度関連しているかを判断します。 これにより、文脈全体を広く理解し、遠く離れた単語同士の関係も捉えることが可能になります。 自己注意メカニズムは特に、長い文章や複雑な文構造を扱う際に効果的です。

並列処理によるスケーラビリティ

トランスフォーマーは、入力データ全体を並列処理できるため、従来の逐次処理型モデルに比べて非常にスケーラブルです。 これにより、大規模なデータセットを短時間で処理可能となり、LLMのトレーニングに最適なアーキテクチャとなっています。 スケーラビリティの高さは、モデルの精度と効率を同時に向上させる要因でもあります。

トランスフォーマーモデルは、NLPにおける多くの課題を解決し、従来のモデルでは不可能だった長い文脈や複雑な依存関係を捉える能力を備えています。 その結果、BERTやGPTといったLLMの基盤技術として広く採用され、多様なNLPタスクに応用されています。

次のセクション「自己注意メカニズムとマルチヘッドアテンション」では、トランスフォーマーモデルの中心技術である自己注意メカニズムと、これをさらに強化するマルチヘッドアテンションについて詳しく解説します。

公開日: 2024-09-07
最終更新日: 2025-01-27
バージョン: 1

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。