2.2 計画フェーズとは?|WBS・スケジュール・リスク管理でプロジェクトを設計する

2.2 計画フェーズ(Planning)

プロジェクトの成功は、スタートの時点では決まりません。しかし、失敗の原因の多くは「計画段階」にあるといわれます。
計画フェーズは、プロジェクトの「青写真」を描くもっとも重要な工程です。曖昧なまま走り出してしまえば、方向性を見失い、後戻りや手戻りが発生し、成果やコストに大きな影響を与えることになります。

このフェーズでは、目的を達成するために「何を」「いつまでに」「誰が」「どのように」行うかを具体化し、全体の進行をコントロール可能な状態に落とし込んでいきます。

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計画フェーズの目的

計画フェーズの目的は、次の3点に要約できます:

  • プロジェクトの全体像を可視化し、ゴールへの道筋を設計する
  • 関係者の認識を揃え、共通の判断基準を持つ
  • 進捗やリスクを定量的に把握できる仕組みをつくる

特に複数チーム・関係部門が関わる場合、このフェーズでの情報整理と合意形成はプロジェクト成否の分水嶺となります。

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主な計画作業と成果物

計画フェーズでは、以下のような活動が実施されます:

1. スコープの明確化

スコープ(=プロジェクトでやること・やらないこと)を定義し、プロジェクトの「守備範囲」を明確にします。ここでは、成果物の仕様や制約条件なども整理します。

2. WBS(Work Breakdown Structure)の作成

スコープをもとに、必要な作業を「構造化して細分化」したものがWBSです。
これにより、作業漏れを防ぎ、後のスケジュールやリソース割り当ての基礎になります。

3. スケジュールの策定

WBSで分解された作業に対して、順序関係・依存関係・所要時間を整理し、ガントチャートなどで可視化された実行スケジュールを作成します。

4. リソース(人・物・時間・予算)の割り当て

各タスクに必要な担当者、工数、スキル、設備、予算などを割り当て、無理のない実行体制を設計します。

5. リスクの特定と対応計画

プロジェクトに潜むリスク(予測される問題)を洗い出し、それに対して事前に対応策(回避・軽減・転嫁・受容)を決めておきます。

6. コミュニケーション計画の策定

プロジェクト関係者間で誰が、いつ、どのように情報を共有するかを明確にします。定例会議の頻度や報告フォーマットなどもこの段階で定義します。

7. 品質マネージメント計画

成果物に求められる品質を定義し、その品質をどのように確認し、担保するのか(レビュー、テスト、承認など)を設計します。

8. 調達・外部ベンダー計画

外注が必要な場合は、調達対象や契約条件、評価基準などを事前に明確化し、調達戦略を計画します。

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成果物の例

計画フェーズで作成される主なドキュメントは以下の通りです:

  • プロジェクト計画書(Project Management Plan)
  • WBS一覧と作業定義書
  • ガントチャート(スケジュール)
  • リスク登録簿(リスク一覧+対応策)
  • リソース割当表
  • コミュニケーションマトリクス
  • 品質管理計画書

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計画フェーズでの注意点

  • 完璧主義に陥らない: 計画は「柔軟に修正される前提」で作るべきです
  • 見積もりが楽観的になりがち: 業務経験や過去データに基づいた現実的な見積もりを
  • 関係者を巻き込む: 計画は「納得感」が重要。現場や実行者の声を反映しましょう

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まとめ:計画はプロジェクトの「設計図」

計画フェーズは、プロジェクトの青写真を描く工程です。
ここでしっかりと準備することで、進捗のブレを小さく抑え、チーム全体が共通の目的に向かって進みやすくなります。
逆に、「なんとなく」のまま走り出してしまうと、途中で迷子になったり、関係者間にズレが生じたりして、修正に大きなコストがかかることになります。

だからこそ、時間をかけてでも「考える時間」「共有する時間」「設計する時間」をこのフェーズで確保することが、プロジェクト成功への最短ルートです。

→ 次は「2.3 実行フェーズ(Execution)」へ進みましょう。

公開日: 2024-12-08

下田 昌平

株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。

チーム

下田 昌平

株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。