2.3 進捗管理のコツ|「進捗90%」が3か月続く理由

2.3 進捗管理のコツ|「進捗90%」が3か月続く理由

第2章 2.3 ← 2.0 プロジェクトの進み方

「進捗90%」が3か月続く理由

実行フェーズでいちばん多い失敗は、遅れることではありません。遅れているのに、数字の上では遅れていないように見えることです。進捗率は毎週きれいに上がり、報告会も問題なく終わり、それでも終わりが近づいてこない。この現象には、はっきりした仕組みがあります。

はじめてこのページに来た方へ このページは全10章のチュートリアルの2.3です。計画の作り方は2.2、進捗の追い方をさらに詳しくは第6章で扱っています。専門用語はすべてページ下部で説明しています。

この記事の要点

  • 自己申告の進捗率は嘘ではありません。ただ、残りの中身を誰も見ていないだけです。
  • 見るべき数字は「終わったと他人が判定できたものの数」です。0か100しかありません。
  • 実行フェーズの仕事の中心は、報告を集めることではなく、止まっているものを外すことです。
  • 止まっている理由の多くは作業の難しさではなく、待ちです。回答待ち、承認待ち、環境待ち。
  • 週に一度、ボードを一緒に見る10分が、報告資料より多くのことを教えてくれます。

2本の線が離れていくのを見てください

次の図は、同じプロジェクトを2つのやり方で測ったものです。オレンジは各担当者が申告した進捗率の合計、青は「他人が見て終わったと判定できた成果物」の数です。

自己申告の進捗率と、検収まで終わった成果物の推移 第1週から第20週までの推移です。自己申告の進捗率は早い段階から急に上がり、第12週には9割近くに達したあと、ほぼ平らなまま第20週まで続きます。一方、検収まで終わった成果物の数は階段状にしか増えず、第20週の時点でも半分に届きません。2本の線の開きが、実際に残っている作業量です。 100% 50% 0% 第1週 第4週 第8週 第12週 第16週 第20週 自己申告の進捗率 「9割できています」 検収まで終わった成果物 この開きが 残りの作業量です 「進捗90%」が3か月続くのは、90%が嘘だからではなく、残り10%の中身を誰も見ていないからです。 オレンジは各担当者の感覚の合計、青は「他人が見て終わったと判定できたもの」の数です。実行フェーズで 見るべきは青のほうで、オレンジは会議のための数字にすぎません。
2本の線の形の違いに注目してください。オレンジはなめらかに上がり、途中から平らになります。青は階段状で、上がるときだけ上がります。第12週以降、オレンジはほとんど動いていないのに、青は動いています。この期間、報告の数字だけを見ていた人には何も起きていないように見えていました。

90%は嘘ではありません

担当者が「9割できています」と言うとき、その人は嘘をついていません。頭の中では実際に9割終わっています。設計は済み、主要な処理は書けていて、あとは細かいところだけ。

問題は、その「細かいところ」の中身を誰も見ていないことです。エラー処理、他システムとのつなぎ込み、想定外のデータへの対応、動かしてみて初めて分かること。これらは作業量として大きいうえに、やってみるまで量が分かりません。だから9割から先が進まないのではなく、最初から9割ではなかったのです。

解決策は、担当者を疑うことではありません。測るものを変えることです。「あなたの感覚で何%ですか」ではなく、「終わったと他人が判定できるものは、いくつありますか」と聞く。これなら0か100しかなく、感覚が入り込む余地がありません。

実行フェーズの仕事は、報告を集めることではありません

実行フェーズに入ると、プロジェクトを持っている人の一日は、驚くほど報告と会議で埋まります。日報を読み、進捗を集計し、週報を書き、定例に出る。忙しく、そして何も動かしていません。

この時期の本当の仕事は、止まっているものを外すことです。そして止まっている理由は、たいてい作業の難しさではありません。待ちです。

  • 先方から回答が来ていないので、設計を確定できない。
  • 承認が回っていないので、発注できない。
  • テスト環境が用意されていないので、確認できない。
  • 別の担当者の作業が終わっていないので、着手できない。

これらは、担当者ひとりでは動かせません。動かせるのは、複数の部署に声をかけられる立場の人——つまりあなたです。週の中に、報告を読む時間ではなく、待ちを外しにいく時間を置いてください。これが実行フェーズでいちばん価値のある30分です。

週に10分の「ボードを一緒に見る」

進捗報告の会議ではなく、全員でボードを見ながら「止まっているのはどれですか」だけを聞く時間です。順番に近況を話す会議と違い、10分で終わります。そして進捗報告より多くのことが分かります。人は「遅れています」とは言いにくいものですが、「これは○○さんの回答待ちです」なら言えるからです。

最初の遅れが、いちばん重要な情報です

実行フェーズで起きる最初の小さな遅れは、それ自体は大した問題ではありません。その遅れがどう扱われるかが、そのあと数か月を決めます。

三日の遅れが報告され、責められることなく、日程が調整されたとします。次の遅れも報告されます。逆に、三日の遅れを報告した人が「なんとかならないのか」と言われたとします。次からは報告されません。取り返せる見込みがあるうちは黙り、取り返せないと分かった時点でようやく表に出ます。そのときには一か月になっています。

だから最初の遅れへの反応は、意識して選んでください。聞くべきは「なぜ遅れたのか」ではなく、「何があれば動きますか」です。前者は説明を求める問いで、後者は解決を求める問いです。返ってくるものがまったく違います。

変わったことは、変わったと記録する

実行フェーズでは、計画が必ず変わります。範囲が増えることもあれば、順番が変わることも、担当が代わることもあります。ここで大事なのは、変えないことではなく変えたと分かるようにしておくことです。

とくに日本の現場でよく揉めるのが「仕様変更」の扱いです。相手からの追加要望が、追加なのか、もともと入っていたのか。ここは感情の問題ではなく記録の問題で、立ち上げで書いた「やらないこと」と議事録があれば、たいてい静かに片づきます。逆にどちらもなければ、声の大きさで決まります。

変更を扱う具体的な手順は6.2で扱います。実行フェーズの段階では、変えたときに一行書くという習慣だけあれば十分です。

ABではこう見えます

AB Projectsのボードは、青い線——つまり「終わったと判定できたものの数」——をそのまま表しています。完了列に移ったものだけが数えられるので、感覚の入り込む余地がありません。週に一度この列の増え方を見れば、報告資料を待たずに実態が分かります。

止まっているものは、課題として登録しておくのが実用的です。「○○部の回答待ち」を担当者と期日つきで置いておけば、それが誰の遅れなのかがはっきりします。何も登録しなければ、他部署の回答待ちも、最後にはプロジェクトの遅れとして記録されます。

このページで使った言葉

進捗
計画に対してどこまで進んだかです。自己申告の進捗率は当てになりにくく、「終わったもの」を数えるほうが正確です。くわしく →
課題
すでに起きていて、対処しないと進まない事柄です。一覧にしたものを課題管理表と呼びます。くわしく →
仕様変更
決まっていた内容を変えることです。日常会話ではこう呼ばれますが、正式には変更管理の対象になります。くわしく →
定例
決まって開かれる打ち合わせです。ここで言えなかったことは基本的に表に出ないため、言いやすさが会議の品質そのものです。くわしく →
エスカレーション
自分の権限で決められないことを、決められる人に上げることです。早く上げるほど選べる手が多く残ります。くわしく →
検収
納めたものを相手が確認し、正式に受け取ることです。ここまで進んで初めて「終わった」と数えられます。くわしく →

6.0 進捗の追い方

実態が見える進捗管理を、もう一段くわしく。

6.2 課題と変更の管理

止まっているものと、変わってしまったものの扱い方。

2.4 終結

「終わったつもりの日」から先に残っているもの。


公開日: 2024-12-09 最終更新日: 2026-07-28

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