2.4 終了フェーズとは?|プロジェクトの引き渡しと振り返りで学びを未来につなぐ

2.4 終了フェーズ(Closing)
プロジェクトには、必ず終わりがあります。
その「終わらせ方」をどう設計し、どう実行するかによって、プロジェクトの評価も、チームの納得感も、次に活かせる学びの深さも大きく変わります。
終了フェーズは単なる「作業の終わり」ではなく、成果を引き渡し、関係者の合意を得て、チームが一段落するフェーズです。
また、プロジェクトから得られた知見や失敗を振り返り、次のプロジェクトに活かすための重要な学びの機会でもあります。
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終了フェーズの目的
このフェーズの主な目的は以下の通りです:
- 成果物の正式な引き渡し(社内・社外の顧客などへ)
- プロジェクトの完了確認と承認(スコープ通り実施されたか)
- 教訓(Lessons Learned)の収集と共有
- 関係者・メンバーへの感謝とクロージング
- 文書や記録の整理・保管(再利用や監査対応のため)
終了フェーズは、プロジェクトの「公式な終点」であると同時に、組織としての「学びの出発点」でもあります。
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1. 成果物の引き渡しと完了確認
プロジェクトが目標とした成果物(システム、レポート、プロセス改善、イベントなど)を、正式に関係者へ引き渡します。
この際、以下のような点が確認されることが一般的です:
- 仕様・要件に沿った内容になっているか
- 品質・納期・予算の各条件を満たしているか
- 運用や保守に必要なマニュアルや引き継ぎ資料がそろっているか
また、最終レビューや承認会議を経て、正式に「プロジェクト完了」と判断されることが多いです。
この「完了」の合意を明文化しておくことは、後々のトラブル防止にもつながります。
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2. 振り返り(Lessons Learned)
終了フェーズで特に重視されるべきなのが、「振り返り」です。
振り返りは、次のプロジェクトにとっての最大の資産となる学びを残すプロセスです。
振り返りでよく使われるフレームワークに「KPT」があります:
- Keep: うまくいったこと。次回も継続すべき工夫
- Problem: 課題となったこと。うまくいかなかった点
- Try: 次回改善のために試してみたいこと
このように、感情論ではなく構造的に良し悪しを振り返ることで、学びの質が上がり、組織としての成長にもつながります。
振り返りの場は、評価や反省のためではなく、「組織として前進するための機会」として設計しましょう。
チーム全員が率直に意見を出せる雰囲気づくりもマネージャーの重要な役割です。
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3. 文書・記録の整理と保管
プロジェクトで作成されたドキュメント(議事録、成果物、課題管理表、進捗記録、決裁履歴など)を適切に整理・保管することも忘れてはいけません。
これは次のプロジェクトでの参考になるだけでなく、社内監査やトラブル発生時の証跡としても重要です。
また、ナレッジベースや共有フォルダ、プロジェクト管理ツールなどに適切に残しておくことで、後進のメンバーが過去の知見にアクセスできるようになります。
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4. チームの解散とクロージング
プロジェクトが完了したら、チームとしての役割も終わります。
このとき、メンバーや関係者に対して正式に感謝を伝え、クロージングをすることは、心理的にも非常に重要です。
小さな打ち上げ、感謝メール、社内表彰など、形式はさまざまですが、「終わったことをみんなで共有し、納得して終わる」経験は、次の仕事への前向きなエネルギーになります。
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5. 次への橋渡し
終了フェーズは、単なる締めくくりではなく、「次に向けたはじまり」とも言えます。
今回の学びをまとめ、関係者や社内の他部署と共有することで、プロジェクトの成果はチームの外へも広がっていきます。
「プロジェクトを終わらせる」ことと、「プロジェクトを終える文化を育てる」ことは、組織にとって大きな意味を持ちます。
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まとめ:終わり方が次の成功をつくる
どれだけ素晴らしい成果を出しても、終わり方が雑であれば印象は台無しになります。
逆に、終わり方が丁寧であれば、たとえ苦しいプロジェクトだったとしても、「やってよかった」と思える経験になります。
終了フェーズでは、「引き渡す」「記録する」「振り返る」「感謝する」「次へつなげる」ことを意識して、プロジェクトをきれいに着地させましょう。

下田 昌平
株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。カテゴリー
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下田 昌平
株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。