外部ツールとのプロトコル統合とは?|MCP入門 4.4|カレンダー・チャット・CRMをAIと連携する設計法

4.4 外部ツールとのプロトコル統合
生成AIを業務現場や日常のワークフローに実装するうえで欠かせないのが、外部ツールとの連携です。 チャット、カレンダー、ファイルストレージ、CRM、メール、データベースなど、ユーザーがすでに使っている既存のアプリケーションと 生成AIの「思考」と「応答」をつなげることで、AIは“ただの会話相手”から、“文脈に応じて行動するエージェント”へと進化します。
このセクションでは、MCP(Model Context Protocol)をハブとした外部ツール統合の考え方、構造設計、実装例について丁寧に解説します。
統合の目的
- 文脈のリアルタイム更新: ユーザーの行動やスケジュール、最新データを文脈に即座に反映
- AIからのアクション実行: ユーザーの代わりにツール上で操作(例:予定登録・DB更新)
- UIのシームレス化: チャット内で完結するUX設計
主要な連携先と例
- Google Calendar / Outlook: 予定の取得・提案・登録
- Slack / Teams: 社内共有・通知・対話のハブ
- Notion / Confluence: ドキュメント参照・要約・更新
- Salesforce / HubSpot: 顧客データへの応答反映・CRM入力支援
- Google Sheets / Excel: データ取得・分析・グラフ化
統合の構成モデル(例)
{
"user_action": "プロジェクトAの週報を確認したい",
"tools": {
"calendar": {
"query": "プロジェクトAの過去7日間の予定を取得"
},
"notion": {
"query": "プロジェクトA週報ページの最新更新日と内容"
}
},
"context_update": "先週は会議が3回、納品が1件ありました。週報はまだ未提出のようです。"
}
MCPが担う役割
- タスク設計とインテンションの抽出: ユーザーの目的から適切なツール操作を判断
- テンプレート制御: 外部データをAIが理解しやすい形式でテンプレートに挿入
- セッション文脈への統合: 操作結果をモデルの“現在の思考状態”として維持
設計パターン1:情報取得のみ
モデルが外部APIから情報を取得し、それを回答に反映する。 よくある構成は「Web検索付きチャットボット」や「FAQベースのヘルプデスク」など。
設計パターン2:アクション提案 + ユーザー確認
AIが“やるべきこと”を提案し、ユーザーが承認することで実行される構成。 例:「会議が必要です → 今週水曜15時で予定を押さえますか?」
提案:『水曜15:00〜「A社レビュー会議」予定を作成』 → 確認 → 実行API発動
設計パターン3:自動実行型
一定の条件下ではAIが自動で外部アクションを実行(例:入力補完、リマインド通知)。 セキュリティや監査ログが重要になる。
セキュリティ・認証の設計
- OAuth 2.0によるユーザー認可とトークン管理
- スコープ制御(読み取り専用、編集権限の分離)
- 操作ログの保存とユーザーへの通知
- モデルによる意図的な誤操作防止(制約ベース設計)
外部ツールとの統合は、生成AIの可能性を「知識応答」から「文脈に基づいた意思決定と実行」へ拡張するステップです。 MCPはこの接続を安全に、柔軟に、スケーラブルに行うための設計原則を提供します。 特に、ユーザー意図・ツール操作・状態管理を一貫した文脈として構築することが、実運用での鍵となります。
ここまでで、MCPの構造や外部ツールとの統合方法について理解を深めてきました。
次の章では、これらの基盤をもとに、MCPを具体的なユースケースにどのように応用していくかを解説します。 チャットボット、タスク分離、RAG、マルチエージェントなど、実務での設計パターンを体系的に学んでいきましょう。 → 第5章 MCP設計パターンとユースケースへ進む

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。カテゴリー
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任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。