システムメッセージ vs ユーザープロンプトとは?|MCP入門 6.2|LLMの人格と応答品質を分ける設計手法

6.2 システムメッセージ vs ユーザープロンプト
生成AIに指示を与える際、私たちは通常「プロンプト」と呼ばれるテキストを使いますが、実際にはそのプロンプトにも異なるレイヤーの役割があります。 特に、OpenAIのChat APIや多くのLLMプラットフォームでは、「system」「user」「assistant」といったロール(役割)ごとのプロンプト構成が採用されています。
本セクションでは、システムメッセージ(system message)とユーザープロンプト(user prompt)の違いに焦点を当て、 モデルの挙動にどのような影響を与えるのか、またそれをMCPの設計にどう活かすかを考察します。
システムメッセージの特徴
システムメッセージは、モデルに対して前提となる人格・役割・行動方針を与える部分です。 たとえば「あなたは有能な医師として振る舞ってください」「ユーザーに対して常にていねい語で応答してください」などが該当します。
このメッセージは会話の開始時点で一度渡され、その後のすべての応答に影響を与えるため、モデルの“態度”や“目的意識”を決定づける設計要素です。
ユーザープロンプトの特徴
一方、ユーザープロンプトは、モデルに対する具体的な問いかけや命令に相当します。 「この商品の返金ポリシーを教えて」「以下の文章を100文字以内で要約して」といった発話がこのレイヤーに該当します。
ユーザープロンプトは、モデルの応答内容を短期的に制御するための入力であり、会話の中で毎回変化するものです。
設計上の違いと使い分け
MCPでは、これら2つを明確に分離して管理することが、文脈の安定性と応答の品質に直結します。
- システムメッセージには、役割・方針・トーン・制約条件などの「固定的要素」を含める
- ユーザープロンプトには、具体的な質問や命令といった「変動要素」を渡す
こうした構造化により、プロンプトの誤解や混乱を防ぎ、再現性のあるモデル応答を実現できます。
人格設計との関係
システムメッセージは、モデルに人格(persona)を与えるための重要なチャネルでもあります。 たとえば、「あなたはポジティブで親しみやすいサポート担当者です」と設定すれば、 同じユーザープロンプトに対しても応答のスタイルが変化します。
このように、ユーザーとの関係性やブランドイメージを意識した応答設計において、システムメッセージはMCP設計の土台となります。
システムメッセージとユーザープロンプトは、同じ「入力」でありながら、モデルに与える影響はまったく異なります。 MCPではこのレイヤーを明確に区別し、それぞれに適した設計を行うことで、モデルの一貫性・応答品質・人格表現をより高めていくことが可能になります。
次のセクションでは、「ストラクチャード・コンテキスト vs ナチュラル・プロンプティング」という視点から、構造化された入力と自由記述の設計手法を比較・検討していきます。 → 6.3 ストラクチャード・コンテキスト vs ナチュラル・プロンプティングへ進む

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。カテゴリー
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任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。