ストラクチャード・コンテキスト vs ナチュラル・プロンプティングとは?|MCP入門 6.3|構造化と柔軟性を両立するプロンプト設計

6.3 ストラクチャード・コンテキスト vs ナチュラル・プロンプティング
生成AIに情報を渡す方法には、大きく分けて2つのアプローチがあります。ひとつは「ストラクチャード・コンテキスト」、つまりJSON形式や構造化テンプレートなどを使って明示的に情報を記述する方法。もうひとつは「ナチュラル・プロンプティング」、すなわち自然言語で状況や意図を表現する方法です。
本節では、これら2つのアプローチを比較しながら、それぞれの利点・課題、そしてMCP設計においてどのように使い分けるべきかを解説します。
ストラクチャード・コンテキストの特徴
ストラクチャード・コンテキストは、明確なスキーマと一貫性を持ってモデルに情報を与えることができます。たとえば、以下のような情報構造でプロンプトを生成することができます:
- role: "support_agent"
- user_intent: "return_request"
- previous_summary: "ユーザーは返品条件について不満を抱いている"
このように明示的な構造をもったコンテキストは、解釈の曖昧さを排除し、再現性を高める上で極めて有効です。
ナチュラル・プロンプティングの特徴
一方で、自然言語で自由に記述されたプロンプトは、柔軟性と人間らしさを持ちます。たとえば、 「このお客様は前回返品でトラブルがありました。丁寧な言葉で案内してください」といった書き方は、より自然なコミュニケーションを誘発します。
ただし、言い回しや表現が曖昧な場合、モデルによっては解釈がブレることもあり、制御性には限界があります。
MCPにおける使い分けのポイント
MCPでは、両者を適材適所で併用することが鍵です。次のような判断基準が考えられます:
- 厳密な動作や一貫した応答が求められる → ストラクチャード・コンテキスト
- 人間らしい共感や柔らかい言葉づかいが求められる → ナチュラル・プロンプティング
- テンプレート化された会話の再利用性を高めたい → ストラクチャードを基本に、必要に応じてナチュラルで補足
両者を統合するプロンプト設計
実際のプロンプト設計では、ストラクチャードで渡す“設計情報”と、ナチュラルで補完する“文脈”を組み合わせることが一般的です。 たとえば、テンプレートにはスロット構造で「対応カテゴリ」「前回の不満点」などを渡しつつ、 プロンプト末尾に「今回は丁寧な表現でお願いします」などを自然文で添える形です。
ストラクチャード・コンテキストとナチュラル・プロンプティングは、それぞれに強みと限界を持っています。 MCPの設計においては、タスクの性質や期待される応答のトーンに応じて、この2つのアプローチを戦略的に組み合わせることが、実用性と柔軟性を両立する鍵となります。
次のセクションでは、こうしたストラクチャード設計の一例として、JSONスキーマを活用した状態制御について詳しく見ていきます。 → 6.4 JSONスキーマによる状態制御の工夫へ進む

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。カテゴリー
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任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。