RAGとの統合設計とは?|MCP入門 4.1|生成AIの文脈構築を強化する検索補助付き設計

4.1 RAGとの統合設計
生成AIの応答精度を高め、最新の情報やドメイン固有の知識に対応するために、 Retrieval-Augmented Generation(RAG:検索補助付き生成)は欠かせないアプローチとなっています。 このセクションでは、MCP(Model Context Protocol)とRAGをどのように統合し、 モデルの応答の正確性・一貫性・柔軟性を両立させるかについて詳しく見ていきます。
RAGとは何か?
RAGは、ユーザーからの質問に対して、LLMが直接回答を生成するのではなく、 まず関連するドキュメントや知識ベースを検索(Retrieve)し、 その検索結果をコンテキストとしてモデルに渡してから応答を生成(Generate)する構成です。
たとえば、商品マニュアル、社内FAQ、顧客対応履歴などがRAGの検索対象になります。 こうした知識はモデルに事前学習されていなくても、検索ベースで都度挿入することで“今この瞬間の知識”として扱えます。
MCPとの接続ポイント
- 検索層: どのような情報ソースに対して検索をかけるか(ベクターストア、全文検索など)
- 統合層: 検索結果をどのようにMCPコンテキストに埋め込むか
- 制御層: いつ、どの条件でRAGを発動するかのルール設計
実装例:FAQからの動的注入
{
"system": "あなたは製品サポートの専門スタッフです。ユーザーの質問に対し、FAQデータを参考に正確に答えてください。",
"context": "FAQ抜粋:Q.返品できますか? A.商品到着後30日以内であれば可能です。ただし開封済みは対象外となります。",
"user": "この前買ったもの返品したいんだけど"
}
パターン1:事前注入型
ユーザーの入力を受け取った時点で検索を行い、検索結果をそのままプロンプトの一部として渡す方式。
- 利点:処理がシンプルで、単発の質問応答に向いている
- 注意点:大量の情報を渡すとノイズになりやすい
パターン2:動的チャンク選択+要約注入
長文検索結果から関連部分だけを抽出し、必要に応じて要約・再構成して文脈に挿入。 MCP側では、このチャンクをテンプレートで動的に差し込みます。
{
"template": "以下の情報に基づいてユーザーの質問に答えてください:{{retrieved_summary}}"
}
パターン3:RAGとエージェント制御の併用
RAGによって得られた情報に応じて、エージェントが関数を呼び出す・処理フローを変えるといった よりインテリジェントな制御が可能になります。
検索の質を高めるための工夫
- クエリ拡張(Query Expansion):ユーザーの質問に類語や同義語を追加する
- チャンク最適化:段落・文単位で文書を分割し、冗長性を減らす
- スコアリング:関連度の高い順に挿入対象を絞り込む
RAGは、MCPの「コンテキスト構成能力」を大きく強化するパートナーです。 単に情報を検索して足すだけではなく、MCPを通じて文脈として整形・制御することで、 より正確で信頼性のあるAI応答が可能になります。
次のセクションへ:4.2 複数モデルの使い分け
次は、生成AI活用におけるコスト・能力・応答性の最適化のために重要となる、 複数LLMの使い分け設計とMCPとの連携について見ていきましょう。 → 4.2 複数モデルの使い分けへ進む

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。カテゴリー
検索履歴
チーム

任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。