人格・役割・意図の設計とは?|MCP入門 7.4|AIの“存在”をプロトコルで定義する方法

7.4 「人格」「役割」「意図」が設計可能な時代へ
生成AIが単なる情報応答エンジンではなく、人間と協働する“主体的なパートナー”として機能する時代が訪れつつあります。 その核心にあるのが、AIに「人格」「役割」「意図」を持たせ、対話の中でそれを再現し続ける仕組みです。 本節では、MCPがこうした次世代設計にどう貢献し得るかを探っていきます。
人格(Persona)の明示と継続
従来のプロンプト設計では、「あなたは◯◯の専門家です」といった一時的な指示が多用されていました。 しかし、今後はこの人格を構造化し、永続的に持たせる必要があります。 たとえば:
- name: "アキラ先生"
- tone: "落ち着いた敬語"
- domain: "心理学と教育分野に精通"
- persona_traits: ["親身", "論理的", "誠実"]
MCPではこれらの情報をテンプレートやスロットとして明示的に管理でき、人格を再現可能な状態構造として定義できます。
役割(Role)の柔軟な切り替え
AIは単一の人格だけでなく、状況に応じて複数の「役割」を持つ必要があります。 たとえば教育現場であれば、同じAIが次のように振る舞いを切り替えることが求められます:
- 家庭教師として学習支援
- キャリアアドバイザーとして進路相談
- 生活コーチとして習慣化支援
MCPではこれを「roleスロットの切り替え」として実装し、状態の一貫性を保ちながらダイナミックにプロンプトを再構築できます。
意図(Intent)のトラッキングと再注入
AIとの対話において、表面的な応答ではなく「本来の目的や文脈的な意図」を理解し、それに沿って出力を調整する能力が求められます。 たとえば「質問に答える」よりも、「相手の不安を和らげる」「次の行動を提案する」など、対話の背後にある意図を明示的に設計する必要があります。
MCPはこの意図をスロットとして定義し、会話の流れに沿って更新・再注入することで、AIの発話に“狙い”を持たせることが可能になります。
人格・役割・意図の共存型プロトコル
今後のMCPは、単に情報を構造化して渡すだけでなく、AIの“存在感”そのものをデザインするプロトコルとして進化していくと考えられます。 これは次のような未来像を意味します:
- 「人格付きエージェント」のAPI化
- ユーザーごとのロール履歴と適応履歴の蓄積
- 意図ごとに評価・フィードバックされる対話ループ
「人格」「役割」「意図」という3つの軸を、設計・管理・再利用できることは、MCPの本質的な可能性を象徴しています。 これらをプロトコルとして明文化することで、AIは単なる道具ではなく、人間と共創する“対話的存在”へと変わっていきます。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。カテゴリー
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チーム

任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。