ツール活用 / マルチエージェントシステムでのMCP適用例とは?|MCP入門 5.4|複数エージェントとツールを統合する文脈設計

5.4 ツール活用 / マルチエージェントシステムでのMCP適用例
LLMを用いたシステムがますます複雑化する中で、ひとつのモデルだけで全てを処理するのではなく、複数のツールやエージェントが連携してタスクをこなす構造が求められています。 これが「Tool Use(ツール活用)」や「Multi-agent system(マルチエージェントシステム)」と呼ばれる領域です。
このセクションでは、こうした高度な協調環境において、モデルコンテキストプロトコル(MCP)がどのように文脈を整理・伝達し、各要素を統合する枠組みを提供できるのかを見ていきます。
なぜMCPが必要なのか
複数のツール(例:カレンダーAPI、ナレッジ検索、データベース)やエージェント(例:サポートエージェント、計算専門エージェント)が連携する場合、次のような課題が生じます:
- それぞれが独自の文脈(Context)を持っているため、情報が断絶しやすい
- 状態(State)や目的(Goal)を明示しないと、行動の整合性が取れなくなる
- ユーザーから見ると、応答が「統一されていない」「一貫性がない」ように見える
MCPが果たす役割
MCPは、これらのツール・エージェントに共通する「文脈の入出力インターフェース」として機能します。 具体的には:
- 各エージェントに対して、共通フォーマットで目的・制約・前提知識を渡す
- ツールからの出力をスロット構造で整理し、モデル側で再利用しやすくする
- システム全体としての状態(グローバルステート)と、個別の状態(ローカルステート)を分離して管理する
LangChainやSemantic Kernelとの連携
MCPの概念は、LangChainやSemantic KernelといったLLMアーキテクチャと非常に親和性が高く、以下のような形で適用されます:
- PromptTemplateとSlotの明示的な分離によるプロンプト制御
- Tool使用時の前提知識・制約条件をMCPで渡すことで、誤動作を防止
- 複数のChain間でコンテキストを引き継ぐためのスキーマ共有
マルチエージェント間の文脈同期
マルチエージェント設計では、各エージェントが独立してタスクをこなすだけでなく、必要に応じて他のエージェントと情報を共有・連携する必要があります。 MCPは、この「状態と目的の明示」をスロットやJSON的な構造で設計することにより、情報の伝達と解釈を正確に保ちます。
ツール活用や マルチエージェントシステムのような高度なLLM活用環境において、MCPは単なる文脈の保持手法ではなく、全体の意思統一・連携構造の設計原則として機能します。 各要素が共通のルールで文脈を受け渡し、ユーザーにとって一貫性のある体験を提供するために、MCPは今後さらに重要な基盤となっていくでしょう。
これで第5章「MCP設計パターンとユースケース」は終了です。 次の章では、モデルが「人間の意図」をどのように読み取り、内部状態を構築しているかをMCP視点から見ていきます。 → 第6章 モデルの“意図解釈”と状態伝達へ進む

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。カテゴリー
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任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。