1.3 LLMと機械学習の違い | トランスフォーマー、トランスファーラーニング、汎用性の比較

1.3 機械学習との違い
LLM(大規模言語モデル)は、従来の機械学習(ML)モデルと多くの点で異なります。 ここでは、LLMとMLのアプローチや使用される技術、応用可能なタスクの違いに焦点を当て、その違いを説明します。
前のセクション「自然言語処理におけるLLMの役割」では、LLMが自然言語処理にどのように貢献しているかを紹介しました。 このセクションでは、LLMと従来の機械学習モデルの違いについて詳しく解説します。
汎用性 vs 特化性
従来の機械学習モデルは、特定のタスクやドメインに特化した学習を行います。 たとえば、特定の目的のためにデータを使って訓練されたモデルは、そのタスク以外では高精度な結果を得ることが難しいです。 一方で、LLMは汎用性が高く、一度学習したモデルをさまざまなタスクに転用することができます。 たとえば、テキスト生成、翻訳、質問応答、さらにはコード生成まで、同じモデルが異なるタスクに柔軟に対応できるのが特徴です。
トランスフォーマーアーキテクチャの活用
LLMは、トランスフォーマーアーキテクチャを基盤にしています。 これは、従来のリカレントニューラルネットワーク(RNN)や畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とは異なり、文脈をより深く理解し、長いシーケンスのデータを効果的に処理することができます。 [RNNは逐次的に処理を行うため長い文章では文脈の保持が困難でしたが、トランスフォーマーは自己注意機構(Self-Attention Mechanism)を利用して、文章全体の依存関係を効率的に捉えることができます。] そのため、LLMは高精度なテキスト生成や意味の一貫性を保った応答生成が可能です。
データのスケーラビリティ
従来の機械学習モデルは、一般的に特定の規模のデータでのみ効率的に機能します。 大量のデータを扱う場合、訓練時間が長くなり、モデルの性能が頭打ちになることがあります。 LLMはスケーラビリティが高く、大量のデータを使えば使うほど、その性能が向上するという特徴があります。 たとえば、OpenAIのGPT-3は1750億のパラメータを持つ大規模モデルであり、膨大な量のデータを効率的に処理し、高精度な結果を生成します。
トランスファーラーニングの活用
LLMは、トランスファーラーニングを活用できる点でも、従来の機械学習モデルと異なります。 トランスファーラーニングとは、事前に大規模なデータセットで学習したモデルを、他のタスクに応用する技術です。 [この手法では、事前学習(Pre-training)で得た知識を基に、少量のデータを用いてファインチューニングを行い、特定タスクへの適応を可能にします。] これにより、LLMは少量のデータでも高い性能を発揮でき、ファインチューニングによって特定のタスクにも適応させやすくなっています。 従来の機械学習では、各タスクごとにモデルを一から訓練する必要がありましたが、LLMはその必要がありません。
このように、LLMは従来の機械学習モデルに比べて汎用性が高く、トランスフォーマーアーキテクチャを活用したスケーラビリティ、トランスファーラーニングによる柔軟なタスク対応が可能です。 これにより、エンジニアはさまざまな課題に対してLLMを応用することができ、効率的かつ高精度な結果を得ることができます。
第2章「トランスフォーマーとアテンションの基本」では、トランスフォーマーアーキテクチャの具体的な仕組みについてさらに深掘りし、LLMの核心となる技術を解説していきます。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。検索履歴
チーム

任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。