LangChainでRAGを構築する方法とは?RetrieverからLLM連携まで徹底解説|LLM入門 5.2

5.2 LangChainによるパイプライン構築

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は複数のコンポーネントから成る設計です。たとえば「文書の分割」「Embeddingの生成」「ベクトル検索」「プロンプトへの統合」「生成モデルへのリクエスト」など、多段階の処理が必要になります。

このようなワークフローを構造化し、開発者が一貫した流れで扱えるようにするためのフレームワークが LangChain です。

LangChainは、RAGを含む生成AIアプリケーションの統合的な開発環境を提供し、複雑な処理を再利用可能なモジュールとして組み上げることができます。

 

LangChainとは?

LangChainは、LLMを活用したアプリケーションの構築を支援するPython/JavaScriptライブラリであり、以下のような特徴を持っています:

  • Retriever、LLM、プロンプト、ツールなどをモジュールとして接続可能

  • チェーン(Chain)やエージェント(Agent)として処理を構成

  • OpenAIやAnthropic、Cohereなど複数のLLMに対応

  • FAISSやPinecone、Weaviateなど主要なVector Storeと連携可能

  • OpenAI Functions / Tool Use、チャットテンプレート、メモリ管理などの高度な機能を抽象化

LangChainは「RAG専用」ではありませんが、RAGの各ステップを素早くつなぎ込める標準的なパイプライン基盤として広く利用されています。

 

RAGパターンにおけるLangChainの構成例

RAGをLangChainで構築する場合、以下のようなコンポーネントを組み合わせます:

  1. Document Loader(読み込み)
     例:PDF, Word, Webページ, Markdown, Notion, etc.

  2. Text Splitter(チャンク化)
     固定長、構造ベース、文法ベースなどに分割

  3. Embedding Model(埋め込み)
     例:OpenAI、HuggingFace Transformers、Cohere

  4. Vector Store(保存・検索)
     例:FAISS、Pinecone、Weaviate、Chromaなど

  5. Retriever(検索エンジンの抽象化)
     メタフィルタや複数ソースからの統合も可能

  6. Prompt Template(テンプレート化)
     プロンプトに情報を注入するための構文管理

  7. LLM(生成)
     OpenAI、Anthropic、Mistral、Azure OpenAIなど任意選択可能

 

シンプルなRAG Chain(質問応答)

LangChainでは、基本的なRAG QAタスクはたった数行で構成できます。

from langchain.chains import RetrievalQA

qa_chain = RetrievalQA.from_chain_type(
 llm=ChatOpenAI(),
 retriever=vectorstore.as_retriever(),
 return_source_documents=True
)

このように、RetrieverとLLMを接続するだけで、RAGとして機能する質問応答Botを構築できます。

 

LangChainの強みと活用の広がり

LangChainが評価されている理由は、単に開発の“手間を減らす”だけでなく、次のような高度な要件にも対応できることです。

  • RAG with Memory:ユーザーとの過去の会話履歴を踏まえた文脈保持

  • Tool Calling / Function Calling:外部ツールとの連携(天気APIなど)

  • Multi-Retrieval / Multi-Query:複数ベクトルDBからの統合検索

  • Async Pipeline / Streaming:応答のストリーム化、非同期処理

LangChainは、生成AIを「一問一答」で終わらせず、業務アプリケーションとしての構造を持たせるための柔軟性を提供します。

 

注意点と導入判断

LangChainは非常に強力ですが、すべてのケースに適しているわけではありません。以下の点に注意が必要です:

  • 開発規模が小さいPoCでは、LangChainの抽象レイヤーが“過剰”になる可能性がある

  • 処理のブラックボックス化が進むと、デバッグや微調整が難しくなる

  • パフォーマンス面では、カスタム実装の方が高速なこともある

つまり、LangChainは「高速に複雑な構成を試作・管理できるツール」であり、完成度よりも柔軟性・学習性を優先する場面に適しています。

 

LlamaIndexの特性と選び方

LangChainが「構成と連携」に強いとすれば、LlamaIndexは「ドキュメントとインデックス」に強いという特徴を持っています。
次のセクション「5.3 LlamaIndexの特徴と差別化ポイント」では、LlamaIndexがRAGの中でどのように位置づけられ、LangChainとの違いがどこにあるのかを詳しく解説します。

公開日: 2025-02-23
最終更新日: 2025-05-25
バージョン: 2

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。

チーム

任 弘毅

株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。