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プロジェクト管理とは、結局のところ何をすることなのか
プロジェクト管理と聞くと、ガントチャートを引いたり、進捗率を集計したり、報告資料をつくったりする仕事を思い浮かべる方が多いと思います。それも仕事のうちではありますが、中心ではありません。この章では、その中心が何なのかを、道具の話をいったん外して説明します。
この記事の要点
- プロジェクト管理の中身は、突き詰めると「見えるようにする」「決めたことを固定する」「早く気づく場をつくる」の3つです。
- 道具は3つ目を助けるためのものです。ガントチャートが偉いのではなく、依存関係が遅れになる前に見えるから価値があります。
- 日本では、プロジェクトを持つ人の多くが専任ではありません。だからこの連載は「肩書きがない人」も読者として想定しています。
- 「プロジェクト管理」と「プロジェクトマネジメント」は、実務ではほぼ同じ意味で使われています。呼び方で悩む必要はありません。
- 第1章は、輪郭(1.1)・必要性(1.2)・定常業務との違い(1.3)の3つで構成されています。
管理という言葉が誤解を生んでいます
「管理」という日本語が、この仕事のイメージをかなり損なっていると思います。管理と言われると、人を見張る、数字を集める、締めつける、といった響きがあります。実際にそういう運用になってしまっている現場もあります。ただ、それは管理がうまくいっている状態ではなく、むしろ失敗している状態です。
プロジェクト管理の仕事を、やっていることの中身で言い直すと、次の3つになります。この3つ以外のことは、ほとんどが手段です。
- 見えていないことを、見えるようにする。「完了」とは何を指すのか。誰の作業が誰の作業を待っているのか。何が起きたら困るのか。放っておくと、これらは全員の頭の中でそれぞれ違う形になったまま進みます。
- 決まったことを、あとから確認できる形で固定する。決めた瞬間は全員が同じ理解でいます。三か月後にはそうではありません。書いていない決定は、あとから議論し直すことしかできません。
- 問題が安いうちに表に出る場をつくる。定例、朝会、ふりかえり、進捗報告。形はいろいろですが、目的はどれも同じで、まだ小さいうちに誰かが言い出せるようにすることです。
この見方をすると、「どの手法を使えばいいのか」という問いは、あまり重要ではなくなります。かわりに使えるのは「いま、この現場で見えていないものは何か。それを見えるようにするには何をすればいいか」という問いです。こちらの問いは、このチュートリアルに一度も出てこないような現場でも使えます。
第1章で扱う3つのこと
第1章は、道具に入る前の土台です。ここが曖昧なまま先に進むと、あとの章がすべて「作業手順の暗記」になってしまいます。
日本の現場では、多くの人が「兼任」でプロジェクトを持っています
このチュートリアルは、プロジェクトマネージャーという肩書きの人だけに向けたものではありません。むしろ、肩書きがないまま任された人のほうが多いと考えて書いています。
これは印象の話ではありません。ノークリサーチが2025年5月に年商500億円未満の企業800社を対象に行った調査では、年商50〜500億円の層で、情報システム担当が専任である企業は16.7%まで下がり、兼任は61.1%に達しています。2023年の同じ調査では専任28.7%・兼任48.0%でしたから、わずか2年でこれだけ動いたことになります。ひとり情シスの比率も24.5%へ上がっています。
つまり中堅規模の日本企業では、システムに関わる仕事を回している人の多くが、それを本業としていません。新しい仕組みの導入も、業務の見直しも、拠点の移転も、日常業務を抱えたまま片手間で進めることになります。この状態を前提にすると、必要なのは分厚い方法論ではなく、短い時間でも効く順番です。このチュートリアルは、そこを意識して書いています。
QCDという言い方で十分です
海外の教科書では、プロジェクトの制約を「スコープ・時間・コスト」の三角形で説明することが多くあります。日本の現場では、製造業から広まったQCD(品質・コスト・納期)のほうが通じます。呼び方が違うだけで、言っていることはほぼ同じです。
大事なのは名前ではなく、この3つが独立していないという点です。納期を縮めれば、品質か費用のどちらかが動きます。品質基準を上げれば、納期か費用が動きます。3つとも動かさずに範囲だけ増やす、ということはできません。「頑張ります」で乗り切ろうとしたときに何が起きるかは、多くの方がすでにご存じのとおりです。
プロジェクト管理の技術の大半は、この3つの綱引きを、感覚ではなく事実で議論できるようにするためのものです。
「プロジェクト管理」と「プロジェクトマネジメント」の違い
この2つは実務ではほぼ同じ意味で使われています。あえて傾向を言えば、ツールや進め方の話をするときは「プロジェクト管理」、PMBOKや資格、体系立てた方法論の文脈では「プロジェクトマネジメント」が使われやすい、という程度の違いです。このチュートリアルでは、読みやすさを優先して両方を使い分けずに使います。
同じように、「PM」と「PL(プロジェクトリーダー)」も会社によって指すものが違います。SIerでは役割として明確に分かれていることが多く、事業会社では区別がないこともあります。呼び方より、誰が決めていい人なのかを確認するほうが実務上は大事です。この点は第4章で扱います。
ABではこう見えます
ここまでの3つ——見えるようにする、決めたことを固定する、早く気づく——は、道具の上ではそれぞれ別の場所に現れます。AB Projectsでは、タスクとその担当者が「見えるようにする」を、プロジェクトWikiが「決めたことを固定する」を、ボードと期日が「早く気づく」を受け持ちます。
兼任で回している方にとって重要なのは、この3つが別々のツールに散らばっていないことです。決定がチャットの奥に流れ、進捗が個人のExcelにあり、課題がメールにある状態では、確認するだけで時間が終わります。ひとつの場所にまとまっていれば、週に30分でも状況が把握できます。
このページで使った言葉
- プロジェクト
- 終わりが決まっていて、今までにない結果を出すために行う一連の仕事のことです。終わりがない、または前例のとおりに回すだけの仕事は、プロジェクトではなく定常業務です。くわしく →
- 定常業務
- 毎日・毎月くり返される、終わりのない仕事です。ルーチンワーク、運用とも呼ばれます。手順が決まっていること自体が強みになります。くわしく →
- QCD
- 品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の頭文字です。製造業由来の言い方で、日本の現場ではプロジェクトの制約を語るときの共通語になっています。くわしく →
- 兼任
- 本来の担当業務を持ったまま、別の役割も同時に担うことです。専任の反対語で、「兼任PM」は日常業務を抱えたままプロジェクトを任されている人を指します。くわしく →
- 依存関係
- ある作業が終わらないと次の作業を始められない、という前後のつながりです。ひとつの遅れが、まったく関係なさそうな場所の遅れになる原因のほとんどがこれです。くわしく →
- 定例
- 週次・月次などで決まって開かれる打ち合わせです。日本の現場では事実上の統制の仕組みになっており、ここで言えなかったことは基本的に表に出ません。くわしく →
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1.1 プロジェクトの定義
始まりと終わりを、日付ではなく「決裁」と「検収」で捉え直します。
2.0 プロジェクトの進み方
立ち上げから終結まで、プロジェクトがたどる流れの全体像です。
用語集
このチュートリアルに出てくる言葉を、実務の意味でまとめています。