5.0 ガント・カンバン・バックログの使い分け

5.0 ガント・カンバン・バックログの使い分け

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ガント・カンバン・バックログは、競合しません

「うちはガントで管理しています」「アジャイルなのでカンバンです」。どちらもよく聞きますが、この2つは選ぶものではありません。同じ作業を別の角度から見ているだけで、見たいものが違えば見る道具も違います。ふつうは3つとも使います。

はじめてこのページに来た方へ このページは全10章のチュートリアルの第5章です。計画の作り方は第3章、進捗の追い方は第6章で扱っています。専門用語はすべてページ下部で説明しています。

この記事の要点

  • ガントは「いつ終わるか」、カンバンは「いま何が止まっているか」、バックログは「次に何をやるか」を見せます。
  • 3つは競合しません。同じ作業を、違う角度から見ているだけです。
  • 選ぶ基準は「どれが優れているか」ではなく「いま何を見たいか」です。
  • 道具を増やすより、いま使っているものが実態を映しているかを確認するほうが先です。
  • 更新されない道具は、実態と違う情報を全員に配り続けます。ないほうがましなことすらあります。

同じプロジェクトを、3つの見え方で

ある勤怠システム導入のプロジェクトがあるとします。作業も担当も日程も、ひとつしかありません。それを3つの道具で見ると、見えるものがこれだけ変わります。

ガントチャート・カンバンボード・バックログの比較 ガントチャートはいつ終わるか、前後関係と遅れの波及を見せ、納期が動かせず工程の前後が固まっている場面に向き、やることが週ごとに入れ替わる仕事には向きません。主に決裁者・発注元・PMが見ます。カンバンボードはいま何が止まっているか、仕掛かりの多さを見せ、日々の流れを回したい場面に向き、半年先の期日を約束する場面には向きません。作業するメンバー全員が見ます。バックログは次に何をやるか、やらないことの置き場を見せ、やることが多すぎて優先順位を決めたい場面に向き、誰がいつ着手するかを示したい場面には向きません。PMと要望を出す人が見ます。 ガントチャート カンバンボード バックログ 何が見えるか いつ終わるか 前後関係と、遅れの波及 いま何が止まっているか 仕掛かりの多さ 次に何をやるか やらないことの置き場 向いている場面 納期が動かせない 工程の前後が固まっている 日々の流れを回したい 運用や問い合わせ対応 やることが多すぎる 優先順位を決めたい 向かない場面 やることが週ごとに 入れ替わる仕事 半年先の期日を 約束する場面 誰がいつ着手するかを 示したい場面 主に見る人 決裁者・発注元・PM 作業するメンバー全員 PMと、要望を出す人 3つは競合しません。同じ作業を、別の角度から見ているだけです。ふつうは3つとも使います。 縦に読むと、それぞれの道具が何のためにあるかが分かります。横に読むと、同じ問いに対して3つが 違う答えを出していることが分かります。「どれを使うか」ではなく「いま何を見たいか」で選んでください。
縦の列がそれぞれの道具、横の行が「同じ問いへの3つの答え」です。3行目の「向かない場面」が実務上いちばん役に立ちます。道具の失敗は、たいてい向かない場面で使ったときに起きます。

選ぶ基準は、「いま何を見たいか」

道具の選定で揉めるとき、たいてい議論は「どれが優れているか」になっています。この問いには答えがありません。かわりに、次の3つの問いのどれが自分の状況かを考えてください。

  • 「間に合うのか」を知りたい。→ ガントチャートです。前後関係を線でつなぐと、遅れがどこまで波及するかが見えます。5.1で扱います。
  • 「いま何が止まっているのか」を知りたい。→ カンバンボードです。仕掛かりが溜まっている場所が、そのまま詰まりの場所です。5.2で扱います。
  • 「次に何をやるべきか」を知りたい。→ バックログです。順番が一列に決まっていると、要望への返し方が変わります。5.3で扱います。

そして多くのプロジェクトでは、この3つとも必要です。決裁者にはガント、チームにはカンバン、要望を出す人にはバックログ。4.3で見たように、相手によって知りたいことが違うからです。

進め方の違いは、道具の違いではありません

ウォーターフォールとアジャイルの選択は、道具の選択とは別の話です。工程をどう並べるかの話であって、何を見るかの話ではありません。

アジャイルで進めていても、決裁者に「いつ終わるのか」と聞かれれば答える必要があり、そこにはガントに近い見せ方が要ります。ウォーターフォールで進めていても、今週の作業が詰まっていることは見えたほうがよく、そこにはカンバンが効きます。

この関係は5.4で詳しく扱います。日本の現場では、基幹系はウォーターフォール、周辺は反復型、という混在がふつうなので、両方の言葉が分かることに実務的な価値があります。

道具を増やす前に、いまの道具を疑う

新しい道具を入れたくなるのは、たいてい「実態が見えない」と感じたときです。ただ、その原因が道具にあることは、実はあまり多くありません。

よくある原因は次の3つです。

  • 更新されていない。更新の手間が大きいか、更新する意味を誰も感じていない。
  • 実態より少しきれいに書かれている。報告のために整えられている。
  • 誰も見ていない。作った人だけが見ている。

このどれかであれば、道具を替えても同じことが起きます。とくに3つ目が多く、会議のために作られる資料は、会議が終わると誰も見ません。逆に、チームが毎日見る場所に置かれた情報は、放っておいても最新になります。

更新されない計画は、ないほうがましなことがあります

実態と合っていない計画表を全員が見ている状態は、計画がない状態より危険です。全員が「予定どおり」だと思い込むからです。更新が続かないなら、粒度を粗くしてください。半年先まで1人日単位で書かれた表より、節目だけが書かれていて実際に更新されている表のほうが、はるかに役に立ちます。

Excelで足りるなら、Excelで構いません

日本の現場では、工程表もWBSも課題管理表もExcelで作られていることが多くあります。これ自体は悪いことではありません。誰でも開けて、誰でも直せて、追加費用がかかりません。

Excelが苦しくなるのは、次の条件が重なったときです。

  • 複数人が同時に更新する。「最新版はどれか」を探す時間が発生します。
  • 依存関係を反映したい。1日ずらしたときに、後続を手で直すことになります。
  • 担当者が自分の作業を自分で更新する。ファイルを開いてもらう時点で、更新されなくなります。

逆に言えば、この3つに当てはまらないなら、Excelのままで十分です。道具の議論より、更新される状態を保つことのほうが大事です。ツールの選び方そのものは5.5で扱います。

ABではこう見えます

AB Projectsでは、この3つの見え方が同じデータの上に載っています。タスクを1回登録すれば、ガントでも、ボードでも、バックログの並びでも見られます。

これが効くのは、更新が1か所で済むからです。ガント用の表とボード用の付箋と要望の一覧が別々にあると、3つとも更新する人はいません。結果、どれも実態とずれます。同じデータを別の角度から見る形にしておくと、誰かが自分の都合で更新した結果が、全員の見ているものに反映されます。

このページで使った言葉

ガントチャート
作業を横棒で並べ、期間と前後関係を時間軸の上に示した図です。工程表とも呼ばれます。くわしく →
カンバンボード
作業を列(未着手・着手中・完了など)で表し、右へ動かしていく形の一覧です。いま止まっているものが見えます。くわしく →
バックログ
やること・やるかもしれないことを、優先順に一列に並べた一覧です。上から順に着手します。くわしく →
工程表
ガントチャートの日本語での呼び方です。建設や製造の現場ではこちらが一般的です。くわしく →
仕掛かり
着手したがまだ終わっていない作業のことです。多いほど流れが悪くなり、完了するものが減ります。くわしく →
依存関係
ある作業が終わらないと次を始められない、という前後のつながりです。ガントの価値は、ここが見えることにあります。くわしく →

5.1 ガントチャートの使い方

線でつなぐと何が見えるようになるのか。

5.2 カンバンボードの使い方

着手中を制限すると、なぜ完了が増えるのか。

5.3 バックログの使い方

順番が一列に決まっていることの価値。


公開日: 2024-12-30 最終更新日: 2026-07-28

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