5.1 ガントチャートの使い方|線でつなぐと何が見えるか

5.1 ガントチャートの使い方|線でつなぐと何が見えるか

第5章 5.1 ← 5.0 道具の選び方

線でつないでいないガントチャートは、ただの絵です

ガントチャートを作ったのに役に立たない、という声はよく聞きます。原因はほぼひとつで、棒を並べただけで、線でつないでいないことです。線があって初めて、ひとつの遅れがどこまで波及するかが見えます。

はじめてこのページに来た方へ このページは全10章のチュートリアルの5.1です。3つの道具の使い分けは5.0、日程の引き方そのものは3.2で扱っています。専門用語はすべてページ下部で説明しています。

この記事の要点

  • ガントの価値は棒ではなく線です。依存関係を引いていないと、遅れの波及が見えません。
  • 線でつながった一本の鎖がクリティカルパスで、そこが1日遅れると全体が1日遅れます。
  • 鎖の外にある作業は、多少遅れても納期に影響しません。急かす先を間違えないでください。
  • 棒の数は20〜40本が上限の目安です。それ以上は誰も更新しません。
  • 当初の計画は消さずに残しておくと、あとで「なぜ遅れたか」を説明できます。

3日の遅れが、どこまで動くか

次の図は、要件確定が3日遅れたときに何が起きるかを示したものです。棒だけを見ていると、遅れたのは1本目だけに見えます。

依存関係でつながったガントチャートで、遅れが波及する様子 要件の確定が3日遅れると、依存関係でつながっている基本設計、移行データ作成、受入テストがそれぞれ3日ずつ後ろに動きます。一方、操作マニュアルは依存関係でつながっていないため、遅れの影響を受けません。薄い青が当初の予定、濃い青が3日遅れが波及したあとです。 要件確定が3日遅れたとき、どこまで動くか 2月第1週 第2週 第3週 第4週 3月第1週 要件の確定 3日遅れ 基本設計 移行データ作成 受入テスト 操作マニュアル つながっていないので動かない 薄い青=当初の予定  濃い青=3日遅れが波及したあと オレンジの線=依存関係。ここを引いていないと波及が見えません 要件確定の3日が、受入テストの開始を3日押しています。この波及は、棒を並べただけでは見えません。 線でつないで初めて見えます。線のないガントチャートは、予定を並べた絵であって、道具ではありません。 逆に、操作マニュアルのように線でつながっていない作業は、遅れても納期に影響しません。
オレンジの線をたどってください。要件確定 → 基本設計 → 移行データ作成 → 受入テストが一本の鎖になっており、3日がそのまま最後まで伝わります。いちばん下の操作マニュアルだけが鎖の外にあり、動いていません。

鎖の上にあるものだけを、急ぐ

線でつないだ結果できる一本の鎖がクリティカルパスです。ここが1日遅れると、全体が1日遅れます。逆に、鎖の外にある作業は多少遅れても納期に影響しません。

この区別が見えていないと、全部の作業を同じ強さで急かすことになります。チームの体力は分散し、しかも肝心の鎖の上が遅れます。「いま急ぐべき3つ」を言えるかどうかが、ガントを持っている意味です。

実務的には、鎖の全部を把握する必要はありません。直近の1か月で、鎖の上にある作業を3つ知っていれば十分です。それ以上は変わっていきます。

棒は、20〜40本が上限です

ガントが更新されなくなる原因の多くは、細かすぎることです。200行あるガントを毎週更新できる人はいません。更新されない表は、実態とずれた情報を全員に配り続けます。

実務的な目安は20〜40本です。それを超えるなら、細かい作業はガントから外してカンバンやタスク一覧に置き、ガントには節目と大きなまとまりだけを残します。

そして3.0でも書いたとおり、近い時期は細かく、遠い時期は粗く。3か月先の作業を1日単位で置いても、その精度に根拠はありません。

当初の計画は、消さずに残す

日程が動いたとき、当初の線を消して上書きすると、あとで「なぜ遅れたのか」を説明できなくなります。当初の予定を薄く残しておけば、どこで何日ずれたのかが図の上に残ります。これは自分を守るためでもあり、次回の見積りを直すための材料でもあります。10.1で扱う「見積りの精度を上げる」は、この記録がないと始まりません。

工程表として使うときの注意

日本の現場、とくに建設・製造・SIerでは、ガントチャートは工程表と呼ばれ、契約や検収と結びついた文書として扱われることがあります。この場合、いくつか気をつける点があります。

  • 提出用と実務用を分ける。先方に出す工程表は節目だけの粗いものにし、実務用は別に持ちます。提出用を細かくすると、動かすたびに説明が要ります。
  • 承認の期間を棒として置く。稟議や検収が回る時間は作業ではありませんが、日程は確実に消費します。3.2で書いたとおり、置かないと遅れます。
  • 相手側の作業も置く。「先方によるデータ提供」「先方による受入確認」を棒として置いておくと、遅れたときにどちら側の遅れかが図の上ではっきりします。

最後の点は、揉めたときに効きます。口頭では「お互い遅れましたね」になりますが、図があると事実の話になります。

ABではこう見えます

AB Projectsでは、タスクに開始日と期日を入れるとそのままガントの形で見られます。依存関係を設定しておけば、前の作業を延ばしたときに後続が自動的に動くので、影響範囲を手で計算する必要がありません。

そしてガントとボードが同じデータの上に載っているので、担当者がボードでタスクを動かせば、ガントにも反映されます。更新のためだけの作業が発生しないことが、更新され続ける最大の条件です。

このページで使った言葉

ガントチャート
作業を横棒で並べ、期間と前後関係を時間軸の上に示した図です。価値は棒ではなく線にあります。くわしく →
依存関係
ある作業が終わらないと次を始められない、という前後のつながりです。先行・後続とも言います。くわしく →
クリティカルパス
そこが1日遅れると全体が1日遅れる、つながった作業の経路です。急ぐ先を教えてくれます。くわしく →
工程表
ガントチャートの日本語での呼び方です。建設・製造・SIerでは契約に紐づく文書として扱われることがあります。くわしく →
マイルストーン
計画上の重要な節目です。粗いガントでは、これだけを置くこともあります。くわしく →
検収
納めたものを相手が確認し、正式に受け取ることです。回る期間を棒として置いておかないと遅れます。くわしく →

3.2 スケジュールの立て方

棒を置く前に、工数を期間に変換する方法。

5.2 カンバンボードの使い方

ガントで見えない「いま止まっているもの」を見る。

2.2 WBSの作り方

ガントに並べる棒を、どう割り出すか。


公開日: 2025-01-04 最終更新日: 2026-07-28

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