4.0 プロジェクトの人の問題|権限がなくても動かす

4.0 プロジェクトの人の問題|権限がなくても動かす

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人の問題は、いちばん最後まで残ります

計画は直せます。日程も、範囲も、道具も、あとから変えられます。変えにくいのは人にまつわることです。しかも人の問題は、技術的な問題のふりをして現れるので、原因が見えにくくなります。この章は、その部分を正面から扱います。

はじめてこのページに来た方へ このページは全10章のチュートリアルの第4章です。計画の作り方は第3章、プロジェクトそのものの定義は第1章で扱っています。専門用語はすべてページ下部で説明しています。

この記事の要点

  • この章はチーム(4.1)・関係者(4.2)・伝え方(4.3)の3つで構成されています。
  • 日本のプロジェクトでは、進める人が指揮命令の権限を持っていないことがふつうです。
  • それでも動くのは、判断材料をこちらで用意して、決める人に渡しているからです。
  • 「言いにくいことが言える場か」が、チームの品質をほぼ決めています。
  • 3つは同時に薄くなります。人が足りない現場ほど、伝え方の設計が効きます。

この章の3つ

第4章の3つの節と、それぞれが薄いときに起きること 4.1チームが薄いと、全員が自分の担当だけを見て、間に落ちた仕事を誰も拾いません。4.2関係者が薄いと、終盤に知らない部署が現れ、しかもその人の言い分はたいてい正しいのです。4.3伝え方が薄いと、全員が誰かが伝えたはずと思い、誰も伝えていない状態になります。 4.1 チーム 集められた人たちを、 動くチームにするまで ここが薄いと 全員が自分の担当だけを見て、 間に落ちた仕事を誰も 拾いません。 4.2 関係者 結果に口を出す人が 誰なのかを先に知る ここが薄いと 終盤に知らない部署が現れ、 しかもその人の言い分は たいてい正しいのです。 4.3 伝え方 誰に、何を、どの頻度で 伝えるかを決めておく ここが薄いと 全員が「誰かが伝えたはず」 と思い、誰も伝えていない 状態になります。 よく動くチームでも、関係者の把握が薄ければ正しいものを間違った相手のために作ります。関係者が 完璧でも、伝える仕組みがなければ1か月で元に戻ります。3つは同時に薄くなり、同時に効きます。
各カードの上半分がその節の内容、下半分が薄かったときの症状です。下半分のどれかに見覚えがあるなら、原因はたいてい能力ではなく、この3つのどれかが設計されていないことです。

権限がないのが、ふつうです

この章の前提として、先に確認しておきたいことがあります。日本のプロジェクトでは、進める人が指揮命令の権限を持っていないことがふつうです。

メンバーの人事評価は、その人の上長がします。他部署のメンバーには、業務命令は出せません。協力会社に対しては、契約上そもそも直接の指示ができない場合があります。増員も外注も、あなたには決められません。

これは異常な状態ではなく、標準的な状態です。「権限がないから動かせない」と考えるとそこで止まりますが、実際には多くのプロジェクトが動いています。動いているのは、権限の代わりに使えるものがあるからで、4.1ではそこを具体的に扱います。

「言いにくいことが言えるか」が、ほぼすべてです

チームの良し悪しを測る指標はいろいろありますが、実務でいちばん効くのはこれです。まずいと思ったことを、まずいうちに言えるか。

1.2で書いたとおり、プロジェクトが崩れるときは突然ではありません。誰かが気づいてから表に出るまでの沈黙の期間が、必ず先にあります。この期間の長さが、そのままプロジェクトの傷の深さになります。

そして沈黙の長さを決めているのは、たいていメンバーの性格ではなく場のつくり方です。三日の遅れを報告した人が責められた現場では、次から報告は来ません。「なんとかならないの」と言われた人は、次からなんとかできるふりをします。

だから最初の悪い報告への反応は、意識して選んでください。聞くべきは「なぜ遅れたのか」ではなく「何があれば動きますか」です。これは2.3でも書きましたが、この章の全体を貫く考え方でもあります。

報連相を、相談から使う

日本の職場では、新人研修で必ず報連相——報告・連絡・相談——を教わります。この3つのうち、プロジェクトで決定的に効くのは相談です。

報告と連絡は、事実が確定してから行われます。相談は、確定する前に行われます。つまり相談だけが、まだ手が打てる段階で情報を動かします。

ところが実務では、相談がいちばん抜けます。確信が持てないことを持っていくのは気が引けますし、「で、どうしたいの」と聞かれると答えられないからです。だからこそ、進める側から「まだ分からない段階で持ってきてください」と明示的に言っておく価値があります。言われていないと、人は確定するまで待ちます。

ABではこう見えます

AB Projectsでは、タスクの担当者がひとりに定まります。9.2でも触れますが、チームに割り当てられた仕事は誰にも割り当てられていないのと同じです。名前が入っている状態が既定になっていると、「間に落ちる仕事」がかなり減ります。

相談を促す仕掛けとしては、確信が持てない段階の懸念も課題として登録できるようにしておくことです。「この認識、合っていないかもしれない」を置ける場所があると、確定するまで黙る必要がなくなります。

このページで使った言葉

報連相
報告・連絡・相談の略で、日本の職場の基本動作です。プロジェクトでは、確定前に動かせる「相談」が最も効きます。くわしく →
上長
承認や評価の権限を持つ、その人の上位者です。プロジェクトを進める人とは別であることがほとんどです。くわしく →
ステークホルダー
結果に影響を受ける人、または影響を与えられる人です。関係者とも呼びます。くわしく →
協力会社
元請けから作業を請け負う会社です。契約の形によっては、直接の指示ができない場合があります。くわしく →
定例
決まって開かれる打ち合わせです。ここで言えなかったことは、基本的に表に出ません。くわしく →
エスカレーション
自分の権限で決められないことを、決められる人に上げることです。権限がない立場ほど、これが主な武器になります。くわしく →

4.1 チームのつくり方

権限がない立場で、それでも動かすための道具。

3.3 要員と属人化

誰が何をできるのかを、表にして見えるようにする。

9.1 はじめての人のQ&A

「権限がないのに、どう進めればいいのか」への答え。


公開日: 2024-12-23 最終更新日: 2026-07-28

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