4.1 プロジェクトチームの編成とは?|役割と信頼で機能するチームをつくる方法

4.1 プロジェクトチームの編成
プロジェクトにおいて「チームをどう組むか」は、成功を大きく左右する要因の一つです。
プロジェクトマネージャーがすべき最初の仕事の一つが、「適切な人材を見極め、必要なタイミングで配置すること」です。
プロジェクトチームの編成とは、単に「人数を揃えること」ではありません。
目的に応じて必要なスキルを見極め、それぞれのメンバーが力を発揮できるように役割・責任・権限を明確にするプロセスです。
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プロジェクトチームとは?
プロジェクトチームは、共通の目標達成のために一時的に結成される組織です。
そこには、社内の複数部門や外部パートナーが関わることも多く、多様性と複雑性をはらんでいます。
そのため、チーム編成には「目的への整合性」「役割のバランス」「関係性の設計」が求められます。
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チーム編成の基本ステップ
1. 必要スキルと役割の洗い出し
まずは、プロジェクトで必要となるスキルセットを明確にします。
たとえば、システム開発であれば「要件定義」「設計」「フロントエンド」「バックエンド」「QA」「PMO」などの専門領域が挙げられます。
このとき、各役割ごとに以下の観点で定義すると効果的です:
- 目的(この役割はなぜ必要か?)
- 主な業務内容
- 必要なスキルや経験
- 責任と意思決定の範囲
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2. メンバーの選定とスキル評価
必要なスキルが見えてきたら、社内外の候補者をリストアップし、各人のスキル・経験・稼働可能時間・チームとの相性を評価します。
ここでは、「スキルマップ」や「プロジェクト履歴書」の活用が有効です。
ポイントは「その人ができるか」だけでなく、「その人がこのプロジェクトで活躍できるか」の視点で見ることです。
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3. チーム構造とコミュニケーションの設計
メンバーが決まったら、次はチーム内の構造と関係性を明確にします。
指揮命令系統、報告ライン、承認プロセスをはっきりさせ、「誰が誰に何を伝えるのか」を設計します。
特にプロジェクトマネージャーは、以下の2つを明確に伝える必要があります:
- R&R(Roles and Responsibilities): 各自の役割と責任
- RACIチャート: 誰が実行・承認・支援・報告するかを表にしたもの
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メンバーのモチベーションと関係性
スキルと役割が揃っていても、チームのパフォーマンスが発揮されないことがあります。
それは、心理的安全性・信頼関係・目的意識といった「人間的な要素」が不足している場合です。
プロジェクトマネージャーとしては、以下を意識することが重要です:
- 「なぜこのプロジェクトをやるのか」を共有し、目的意識を高める
- メンバー同士の対話の機会を意図的につくる(定例・雑談・キックオフなど)
- 成果と成長の両方を承認する文化をつくる
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外部パートナーや関係部署との連携
大規模なプロジェクトでは、外注先や他部署と「一つのチーム」として動く必要があります。
そのためには、次のような工夫が求められます:
- 責任範囲と期待値を契約・文書で明確にする
- 文化や働き方の違いを理解し、橋渡し役を設ける
- 成果物だけでなく「関係性」も管理対象とする
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プロジェクトチームの成長段階(タックマンモデル)
チームは結成から解散までの間に、以下のような段階を経るといわれます:
- Forming(形成期): メンバーが集まり、遠慮しながら探り合う段階
- Storming(混乱期): 意見の対立や衝突が起き、役割が揺れる
- Norming(統一期): お互いを理解し、役割とルールが定まる
- Performing(成果期): チームが目的に集中し、最大限の力を発揮
- Adjourning(解散期): プロジェクト終了に伴いチームが解散
マネージャーは、この変化を理解し、どのフェーズにいるかを意識しながら支援することが求められます。
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まとめ:チームは「構成」ではなく「機能」である
優れたチームとは、優れた個人が集まった集団ではありません。
それは、「必要な役割が適切に機能し、目的に向かって有機的に動けている集団」のことです。
そのためには、スキルの評価と配置だけでなく、役割の明確化、関係性の設計、目的の共有といった要素がバランスよく整っている必要があります。
プロジェクトマネージャーの手腕が最も試されるのは、実はこの「人を束ねる力」かもしれません。
次は、プロジェクト外の関係者との連携を扱う「4.2 ステークホルダーの管理」へ進みましょう。

下田 昌平
株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。カテゴリー
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下田 昌平
株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。