3.2 スケジュールの立て方|工数と期間は別物です

3.2 スケジュールの立て方|工数と期間は別物です

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5人日の作業が、5週間かかる理由

スケジュールが最初から崩れているプロジェクトには、たいてい同じ原因があります。工数と期間を同じものとして扱っていることです。5人日の作業は、5日では終わりません。その人が、この案件に週何日使えるかによって決まります。

はじめてこのページに来た方へ このページは全10章のチュートリアルの3.2です。作業の割り出し方は2.2 WBSの作り方、図としての見せ方は5.1で扱っています。専門用語はすべてページ下部で説明しています。

この記事の要点

  • 工数は「手間の量」、期間は「実際に経つ時間」です。稼働率を掛けないと日程になりません。
  • 見積りを聞いたら、必ず「この案件には週何日使えますか」を足して聞いてください。
  • 日程には、作業時間だけでなく待ち時間——回答待ち、承認待ち、レビュー待ち——を入れます。
  • バッファは各作業に隠すのではなく、まとめて1か所に置いて、誰が使ったか分かるようにします。
  • 納期から逆算した日程は、それが実現可能かどうかを何も証明していません。

工数を期間に変換する

「この作業、どれくらいですか」と聞いて「5人日ですね」と返ってきたとします。この5人日は、その作業だけに専念した場合にかかる手間です。カレンダーの5日ではありません。

工数5人日が実際には5週間かかる仕組み 見積りに書いてある量は工数5人日で、これはこの作業だけに専念した場合にかかる手間です。その人の1週間の実態は、定常業務2日、別案件1日、この案件1日、会議など1日で、この案件には週1日しか使えません。したがって実際にかかる期間は5人日を週1日で割って5週間です。さらに日程には、相手の回答待ち、承認や稟議が回る時間、レビューと直しの往復を足す必要があります。 見積りに書いてある量 工数 5人日 この作業だけに専念した場合にかかる手間 その人の1週間の実態 定常業務 2日 別案件 1日 この案件 1日 会議など 1日 週1日しか使えない 実際にかかる期間 5週間 5人日 ÷ 週1日 = 5週間。ここに待ち時間は含まれていません。 さらに日程に足すもの 相手の回答待ち 承認・稟議が回る時間 レビューと直しの往復 工数は「手間の量」、期間は「実際に経つ時間」です。この2つを同じものとして扱った計画は、初日から 破綻しています。見積りを聞いたら、必ずもう一問——「この案件には週何日使えますか」——を足して ください。日本の現場では、この答えが「1日」や「0.5日」であることが珍しくありません。
上から下へ3段階で読んでください。上段が見積りの数字、中段がその人の現実、下段が変換した結果です。中段の帯の中で青くなっている部分だけが、このプロジェクトに使える時間です。1.3で見たように、兼任が当たり前の日本の職場では、この青い部分は驚くほど小さくなります。

聞くべきもう一問

実務でいちばん効く質問は、これです。

「この案件には、週何日使えますか」

この一問を足すだけで、日程の現実味がまったく変わります。そして日本の現場では、答えが「1日」や「0.5日」であることが本当に多い。定常業務があり、別案件があり、会議があるからです。

ここを確認せずに、5人日を「じゃあ来週末までですね」と置いてしまうと、初日から破綻した計画になります。破綻していることが表に出るのは1か月後で、そのときには「なぜか遅れている」という説明しかできません。

待ち時間を、日程に入れる

もうひとつ、日本の現場で日程が伸びる大きな要因が待ち時間です。これは作業ではないので、工数の見積りには入っていません。

  • 相手の回答待ち。質問を投げてから返ってくるまで、社内で3日、社外で1週間はかかると見ておきます。
  • 承認・稟議が回る時間。金額によっては2週間かかります。決裁のルートを最初に確認しておくと、この日数が読めます。
  • レビューと直しの往復。1往復で終わることはまずありません。2往復を前提に置きます。

これらを日程に書いておくことには、副次的な効果があります。待ちが可視化されるのです。「先方の回答待ち:3営業日」と書いてあれば、4日目に催促できます。書いていなければ、誰も気づかないまま2週間が過ぎます。

バッファは、まとめて1か所に置く

不確実なことがある以上、余裕は必要です。ただし置き方に良し悪しがあります。

よくないのは、各作業にこっそり足しておくやり方です。実際にはよくやられていて、5人日の作業を8人日で申告する。理由は分かりますが、これには2つの問題があります。ひとつは、隠された余裕は必ず使い切られること。8人日あると、8人日かかります。もうひとつは、どこにどれだけ余裕があるのか誰にも分からなくなることです。

良いのは、まとめて1か所に置くやり方です。各作業は正直な見積りで並べ、最後にプロジェクト全体のバッファとして2週間置く。そして使うときに記録する。「データ移行で想定外があり、バッファを3日使用」と書けば、残りが見えます。

この形にすると、バッファは「隠れた甘え」ではなく「共有された残量」になります。残り3日になった時点で、全員がそれを知っている状態になります。

納期から逆算した日程は、何も証明していません

「3月末が納期だから、逆算するとテストは2月中旬から」という引き方は、日本の現場でごく普通に行われます。問題は、その日程が実現可能かどうかを何も検証していないことです。逆算は要求であって、計画ではありません。積み上げた日程と逆算した日程を並べて、差がどれだけあるかを見てください。差が2か月あるなら、それは「頑張る」で埋まる差ではありません。範囲か体制を動かす話になります。

急ぐべき場所は、鎖の上だけです

作業を並べて依存関係でつなぐと、いくつかの作業が一本の鎖になります。この鎖がクリティカルパスで、ここが1日遅れると全体が1日遅れます。

逆に言えば、鎖の外にある作業は、多少遅れても納期に影響しません。この区別が見えていないと、全部を同じ強さで急かすことになり、チームの体力が分散します。

実務的には、鎖の上にある作業を3〜5個把握しておけば十分です。「この3つが遅れたら、納期が動く」と言えれば、注意の向け先が決まります。詳しい引き方は5.1 ガントチャートの使い方で扱います。

節目は、他人が判定できる形で置く

日程には、いくつか節目(マイルストーン)を置きます。ここで気をつけたいのは、他人が達成を判定できる形で書くことです。

「2月末:設計完了」は判定できません。誰の感覚かによります。「2月末:要件定義書が○○部長の承認を得ている」なら判定できます。承認があるかないかだけです。

節目が判定できる形になっていると、その日に「達成した/していない」がはっきりします。していないなら、そこで手を打てます。曖昧な節目は、曖昧なまま通過し、遅れが最後まで見えません。

ABではこう見えます

AB Projectsでは、タスクに開始日と期日を入れると、そのままガントの形で見えます。依存関係を線でつないでおけば、前の作業を1日延ばしたときに後ろが動くので、影響範囲を手で計算する必要がありません。

待ち時間は、待ち自体をタスクとして置くのが実用的です。「先方回答待ち」を担当と期日つきで置いておけば、期日が来たときに表に出ます。何も置かないと、待っていることに誰も気づきません。バッファも同様に、独立したタスクとして置いておくと残量が見えます。

このページで使った言葉

工数
作業に必要な人の手間を人日・人月で表したものです。期間とは別物で、稼働率を掛けて初めて日程になります。くわしく →
稼働率
その人が、実際にこのプロジェクトに使える時間の割合です。兼任が多い現場では20%前後になることも珍しくありません。くわしく →
バッファ
想定外に備えて計画に持たせておく余裕です。各作業に隠すより、まとめて1か所に置くほうが機能します。くわしく →
クリティカルパス
そこが1日遅れると全体が1日遅れる、つながった作業の経路です。急ぐべき場所を教えてくれます。くわしく →
マイルストーン
計画上の重要な節目です。他人が達成を判定できる形で書けていなければ、ただの日付です。くわしく →
稟議・決裁
やるかどうかを組織として決める仕組みです。回る時間は日程に入れておかないと、そのぶん遅れます。くわしく →

5.1 ガントチャートの使い方

日程を図にしたときに、初めて見えてくるもの。

3.3 体制と要員

稼働率の話を、人の側から見るとどうなるか。

2.2 WBSの作り方

日程を引く前に、何を並べておくべきか。


公開日: 2024-12-17 最終更新日: 2026-07-28

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