3.2 スケジュール作成とは?|プロジェクトを動かす時間設計の基本と実践

3.2 スケジュール作成

どれほど優れたアイデアや明確なスコープがあっても、「いつまでに何をやるか」が定まっていなければ、プロジェクトは前に進みません。
スケジュールとは、プロジェクトの時間軸上の“設計図”であり、実行を可能にするフレームです。

計画フェーズにおけるスケジュール作成は、単なる日付の記入作業ではなく、作業の順序・所要時間・依存関係・リスクを総合的に考慮しながら組み立てる、極めて高度な設計作業です。

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スケジュール作成の目的

スケジュールを設計する目的は次の3点に集約されます:

  • 作業の流れを明確にし、全体像を見える化する
  • 各作業に現実的な期限と担当を与える
  • チームと関係者が同じ時間感覚を持てるようにする

この3点が揃って初めて、進捗管理や遅延対応が可能になり、プロジェクト全体がブレずに進んでいきます。

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スケジュール作成の基本ステップ

1. 作業の洗い出し(WBSの活用)

まず、スコープ定義で整理したWBS(Work Breakdown Structure)を使って、プロジェクトに必要な全作業を漏れなく洗い出します。
これにより、「どの作業をどの順番でやるべきか」が見えてきます。

2. 作業順序と依存関係の設定

すべての作業には前後関係(依存関係)があります。たとえば、「要件定義」が終わらなければ「設計」に入れない、といった論理的な順序です。
これを明確にすることで、作業の重なりやタイミングを適切にコントロールできます。

3. 所要時間(工数)の見積もり

各作業にかかる時間を見積もります。これは最も誤差が出やすく、プロジェクト遅延の原因にもなりやすい部分です。
以下のような手法が使われます:

  • 類推見積もり: 過去の類似プロジェクトをもとに推定
  • パラメトリック見積もり: 単位作業 × 数量(例:1ページあたり1時間 × 20ページ)
  • 三点見積もり: 楽観・悲観・最もありそうな見積もりの加重平均

過信せず、余裕を持った見積もりが重要です。

4. スケジュール図の作成(ガントチャートなど)

作業の順序・期間・依存関係が整理できたら、ガントチャートなどで可視化します。
タスクの開始日・終了日、並行作業、クリティカルパス(遅延がプロジェクト全体に直結する作業列)などを把握することができます。

5. マイルストーンの設定

プロジェクトの重要な区切り(中間納品、承認タイミングなど)を「マイルストーン」として設定します。
これにより、関係者との報告や判断のポイントが明確になり、進捗確認もしやすくなります。

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現実的なスケジュールのためのポイント

  • バッファの確保: 全作業に少しずつ余裕(余白)を持たせる
  • 非稼働日(休日・祝日)の考慮: カレンダーに基づいた計画を
  • 並列作業の活用: 並行可能なタスクを適切に重ねることで短縮
  • チームの実行力の考慮: 理想よりも現実のスピードをベースに

「完璧なスケジュール」ではなく、「変化に耐えられるスケジュール」をつくることが重要です。

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よくある落とし穴

  • 楽観的すぎる見積もり: 実行可能性より希望的観測が優先される
  • 依存関係の見落とし: ある作業の遅れが他作業に影響することに気づかない
  • 進捗管理が機能しない: スケジュールを作っただけで放置され、実際の管理に使われない

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スケジュールを「活きた道具」にするには

スケジュールは、作った瞬間が完成ではありません。
それはあくまで「管理のためのツール」であり、日々の進捗確認や判断に使って初めて意味を持ちます。

週次でガントチャートを更新し、タスクごとに完了・遅延・進行中の状態を整理することが、チームのリズムを保ち、関係者の信頼を得る一歩となります。

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まとめ:時間を設計することは、未来を設計すること

スケジュール作成は、未来の時間を“今”の段階で構築する作業です。
不確実な未来を少しでも確実にするために、今できるだけの想像と準備を重ねていく。それが、スケジューリングの本質です。

そして、プロジェクトは必ずしも計画通りには進みません。だからこそ、柔軟さと見通しを両立させたスケジュールこそが、実行力のあるプロジェクトチームをつくる礎になるのです。

→ 次は「3.3 リソースの割り当て」へ進みましょう。

公開日: 2024-12-17

下田 昌平

株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。

チーム

下田 昌平

株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。