3.3 リソースの割り当てとは?|人・時間・コストを戦略的に配分する方法

3.3 リソースの割り当て

プロジェクトにおける「リソース」とは、単に人手のことだけではありません。
人材、時間、設備、スキル、予算など、プロジェクトの実行に必要なあらゆる資源のことを指します。

どれだけ緻密なスケジュールを立てても、必要なリソースが確保できなければプロジェクトは進行できません。
リソースの割り当てとは、言い換えれば「計画を現実に落とし込むフェーズ」なのです。

---

リソース割り当ての目的

リソースの割り当てには、次のような目的があります:

  • 実行可能性の検証: スケジュールと作業量が現実的かどうか判断できる
  • 役割と責任の明確化: 誰が何をやるのかを具体的に設定できる
  • 無理・無駄の排除: 過剰な負担やリソースの空き時間を減らす

計画フェーズにおいてリソースを“数値”として扱い始めるのが、このステージです。

---

主なリソースの種類

  • 人的リソース: プロジェクトに関与するメンバー(スキル、所属、稼働可能時間)
  • 物理的リソース: 設備、ソフトウェア、施設など
  • 時間的リソース: 稼働時間、納期までの余裕
  • 金銭的リソース: 予算、外注費、人件費など

これらは独立しているように見えて、実際には複雑に絡み合っています。
たとえば「短期間で終わらせたい」なら、追加人員や高額な外注が必要になるかもしれません。

---

リソース割り当てのステップ

1. 必要リソースの洗い出し

WBSとスケジュールをもとに、各作業に必要な「人」「時間」「スキル」「設備」をリストアップします。
この段階では「どんな人材が、どれくらい、いつ必要か」という観点が重要です。

2. リソースプールの把握

次に、社内で確保できる人員・設備・時間・予算などの「使えるリソース」を確認します。
ここでは、「どのリソースが、いつ、どれくらい使えるか」を具体的に把握しておくことが求められます。

3. スキルと役割のマッチング

必要なスキルと、実際の人材を照らし合わせ、最適な担当者を配置します。
ここで有効なのがスキルマップ(メンバーごとのスキル・経験・関心などを可視化したもの)です。

4. リソース割当表の作成

リソース割当表(Resource Allocation Matrix)により、「誰が、いつ、どの作業に、何時間」使われるかを整理します。
この表は、進捗管理と調整の基盤になります。

5. 調整と最適化

リソースが不足・過剰になっていないか、現場の負荷が偏っていないかを確認します。
この調整には、リソースレベリング(負荷の山を平準化する)や、リソーススムージング(柔らかく調整する)といった手法が有効です。

---

外部リソース(外注・ベンダー)の活用

社内リソースだけでは足りない場合、外部ベンダーや外注スタッフの活用も選択肢になります。
この場合は、以下のようなポイントに注意が必要です:

  • 契約内容(納期、成果物、価格、責任範囲)の明確化
  • 品質と納期の保証体制(レビュー体制など)
  • 内部チームとの連携と報告体制

外部リソースを単なる「人手」ではなく、「戦力」として活かすには、信頼関係と情報共有が不可欠です。

---

コストの観点からのリソース管理

リソースは“お金”でもあります。
特に人的コストはプロジェクト費用の大半を占めることが多いため、以下のような点を管理します:

  • 作業ごとの人件費の算出(時間単価 × 工数)
  • 外注費、ツール費、施設費などの積算
  • 予算との突合・調整(どこで節約し、どこに投資するか)

リソースの配分とコスト管理を両立させることが、プロジェクトの持続可能性に直結します。

---

よくある課題とその回避策

  • 特定メンバーへの過剰依存: 属人化を防ぎ、知識共有や代替体制を整備する
  • スキル不足: 初期段階でトレーニングや外部支援の予算を確保しておく
  • 空きリソースの見落とし: 一部のメンバーが“待ち状態”にならないように工夫する

---

まとめ:リソース配置は「戦略」そのもの

リソースの割り当ては、単なる管理作業ではありません。
それは「このプロジェクトをどう進めるか」「誰とやるのか」「どこにどれだけ力をかけるのか」という、戦略的な意思決定そのものです。

適切なリソース配置によって、計画は初めて現実味を帯び、実行フェーズに強い推進力を持たせることができます。
リソースの把握・調整・最適化を丁寧に行うことで、プロジェクトはより“動かせる”計画へと進化します。

→ 次は「3.4 リスク管理計画」へ進みましょう。

公開日: 2024-12-19

下田 昌平

株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。

チーム

下田 昌平

株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。