7.2 振り返りと評価とは?|プロジェクトを成長資産に変えるレビューと分析の技術

7.2 振り返りと評価

プロジェクトを成功に導くために重要なのは、実行中のマネジメントだけではありません。
終了後の「振り返りと評価」こそが、次のプロジェクトをより良くするための土台となります。

本章では、成果だけでなくプロセス・チーム・組織的な視点から振り返りを行い、再現性のある成功と、避けられる失敗を明らかにする方法を解説します。


なぜ振り返りが必要なのか

プロジェクトが終わると、多くのメンバーはすぐに次の業務や案件に移ります。
しかし、振り返りをせずに次へ進むと、以下のような損失が生じがちです:

  • 成功の要因が曖昧で、再現できない
  • 失敗やミスが繰り返される
  • 個人に学びが偏り、チームや組織に共有されない

つまり、振り返りは「過去を責めるもの」ではなく、「未来の成功率を高めるための戦略的行動」です。


振り返りの4つの観点

プロジェクト全体を多面的に評価するには、以下の4つの視点が有効です:

  1. 成果: 目標は達成されたか?成果物の質、納期、コスト、満足度
  2. プロセス: 計画・進捗・変更管理の運用は効果的だったか?
  3. チーム: 連携・役割分担・意思疎通に課題はなかったか?
  4. 環境: 外的要因(ステークホルダー、組織体制、ツールなど)は適切だったか?

これらを整理することで、単なる「うまくいった/いかなかった」にとどまらず、本質的な学びにたどりつけます。


評価手法:KPT・5つのなぜ・360度レビュー

具体的な振り返り方法として、次のようなフレームワークが役立ちます:

KPT(Keep・Problem・Try)

  • Keep: 今後も続けるべき良かったこと
  • Problem: 問題やうまくいかなかったこと
  • Try: 次に試したい改善案

5 Whys(5つのなぜ)

問題の根本原因を探るため、「なぜ?」を5回繰り返して本質に迫る方法です。

360度レビュー

プロジェクト関係者全員から多面的なフィードバックを集め、チーム内の相互理解と改善の材料とします。


アクションブリッジでの振り返り実践

アクションブリッジでは、振り返りを以下のような形でサポートできます:

  • タスクの履歴やコメントを時系列で確認し、意思決定の流れを可視化
  • 進捗グラフ(バーンダウン、ガント)を用いてペースと遅延要因を分析
  • 振り返り用テンプレート(KPT記録用)をドキュメント形式で共有
  • 関係者からの匿名コメント・アンケートで率直なフィードバックを収集

これにより、記憶や主観に頼らず、事実と対話に基づいた振り返りを行うことができます。


振り返りを定着させるには?

形式だけのレビューで終わらせないためには、次の工夫が効果的です:

  • 必ず予定を確保し、クロージングプロセスとして扱う
  • PMだけでなく全員参加型にする
  • 指摘よりも「次に活かす視点」で建設的に進める
  • フィードバックを次プロジェクトのWBSやタスクテンプレートに反映する

まとめ:振り返りは「改善の起点」である

振り返りは過去を後悔する場ではなく、未来を設計する場です。
プロジェクトで得た知見を個人の経験にとどめず、チームや組織の“共有資産”に変えていくことが、強いチームの条件です。

→ 次は「7.3 次回プロジェクトへの学び」に進み、ナレッジ化と継承の技術について掘り下げていきましょう。

公開日: 2025-01-13

下田 昌平

株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。

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下田 昌平

株式会社レシートローラーのCEO兼CTOとして、現在電子レシートサービスの開発や、会話を自動で仕分けてアクションタスクを生成するシステム「ACTIONBRIDGE」の開発を手掛けています。幼少期からプログラミングに親しみ、96年には測定器向けのプログラム開発にも携わるなど、技術に対する深い探究心を持ち続けています。 前職では、コールセンター業界最大手の企業の子会社である研究開発会社のCEO/CTOを務め、数多くの技術開発プロジェクトをリードしました。現在もなお、プログラミングの最前線でコードを書き続けています。