7.2 ふりかえりのやり方|反省会にしないための設計

7.2 ふりかえりのやり方|反省会にしないための設計

第7章 7.2 ← 7.0 プロジェクトの終わらせ方

ふりかえりを、反省会にしないこと

ふりかえりが機能しない現場では、たいてい同じことが起きています。人の話になっているのです。誰のミスだったかを確かめる会になると、出てくる言葉は「気をつけます」だけになり、次も同じところでつまずきます。

はじめてこのページに来た方へ このページは全10章のチュートリアルの7.2です。章全体は7.0、個人としての学び方は10.1で扱っています。専門用語はすべてページ下部で説明しています。

この記事の要点

  • 対象は人ではなく進め方です。「どういう仕組みだと、そうなるか」を聞いてください。
  • 最初に話す人を変えるだけで、出てくる話がかなり変わります。上の人が総括すると終わりです。
  • 終わり方は「次に変える1つ」。担当と期日つきで。11個の改善案は、実質ゼロです。
  • 解散する前にやってください。人が散ってからでは集まりません。
  • 途中でもやる価値があります。終わってからより、まだ直せる段階のほうが効きます。

反省会と、ふりかえりの違い

この2つは似た場に見えますが、出てくるものがまったく違います。違いは参加者の性格ではなく、場の設計から生まれます。

反省会になっているときと、ふりかえりになっているときの違い 対象は、反省会では人で誰のミスだったかを問い、ふりかえりでは進め方でどういう仕組みだとそうなるかを問います。出てくる話は「気をつけます」に対し「あの確認を着手前に入れましょう」。発言する人は立場が上の人だけに対し、いちばん困っていた人が最初に話す。終わり方は課題が11個で担当なしに対し、次に変える1つを担当と期日つきで。次回への効果は同じところでつまずくに対し、1つだけ確実に変わっている。 見るところ 反省会になっているとき ふりかえりになっているとき 対象 人。誰のミスだったか 進め方。どういう仕組みだとそうなるか 出てくる話 「気をつけます」 「あの確認を、着手前に入れましょう」 発言する人 立場が上の人だけ いちばん困っていた人が最初に話す 終わり方 課題が11個、担当なし 次に変える1つ。担当と期日つき 次回への効果 同じところでつまずく 1つだけ、確実に変わっている 11個の改善案より、次に確実に変わる1つのほうが価値があります。2つ目は次回に回してください。 左右の差は、参加者の性格ではなく場の設計から生まれます。とくに3行目——最初に話す人が誰か——を 変えるだけで、出てくる話がかなり変わります。立場が上の人が先に総括すると、その後は誰も 違うことを言えません。解散する前に、人が散る前にやることも条件のひとつです。
5行を上から順に見てください。1行目(対象)と3行目(最初に話す人)が原因で、4行目と5行目が結果です。設計を変えられるのは上の3行だけで、そこを変えれば下の2行は自然に変わります。

人ではなく、進め方を対象にする

いちばん大事な設計がこれです。同じ出来事でも、問いの立て方で出てくる答えがまったく変わります。

  • 「なぜ確認を飛ばしたのですか」→ 人への問い。返ってくるのは弁明か沈黙です。
  • 「どういう状況だと、あの確認は飛ばされるのでしょうか」→ 仕組みへの問い。返ってくるのは「あの時期は他の作業が重なっていて」「そもそも確認の担当が決まっていなかった」といった、直せる情報です。

この言い換えは、意識すればすぐできます。主語を人から状況に変えるだけです。そして進行役が最初にこの型で話すと、後に続く人もその型で話します。

最初に話す人を、変える

日本の会議では、立場が上の人が先に総括する形になりがちです。これをふりかえりでやると、そこで終わります。その後に違うことを言える人はいません。

効くのは、いちばん困っていた人から話してもらうことです。いちばん残業した人、いちばん板挟みになった人。その人の話が最初に出ると、場の性質が決まります。「困ったことを言っていい場だ」と全員が理解します。

進行役は、その人に事前に一言かけておくとよいでしょう。「明日のふりかえりで、いちばん大変だったところを最初に話してもらえませんか」。準備があれば話しやすくなります。4.2で扱った根回しの、良い使い方です。

次に変える1つだけを決める

ふりかえりで改善案が11個出ると、達成感があります。そして何も変わりません。11個の新しい習慣を同時に始められる組織は存在しないからです。

だから、終わり方はこう決めておきます。次に変える1つを、担当と期日つきで決めて終わる。

「次回は、要件定義の最後に運用担当への確認を30分入れる。田中さんが立ち上げ時にタスクとして登録する。」

これなら実行されます。そして次のふりかえりで「あれ、やってみてどうでしたか」と聞ける。変わったかどうかを確認できる形になっていることが、11個との決定的な違いです。

残りの10個は、記録として残しておけば構いません。捨てる必要はありません。ただ、今回動かすのは1つです。

KPTを使うなら、Tを1つに絞る

日本のチームでは、Keep(続けること)・Problem(困ったこと)・Try(次に試すこと)の3つに分けて出す進め方が定着しています。使いやすい枠組みですが、Tryを5つも6つも出すと機能しません。Tryは1つ。そして担当と期日をつける。この2点さえ守れば、KPTでもそれ以外の形でも結果は同じです。

解散する前に、そして途中でも

ふりかえりは、人が散る前にやってください。プロジェクトが終わると、メンバーはそれぞれ次の案件に移ります。1か月経ってから集めようとしても、全員の予定は合いません。

そしてもうひとつ。終わってからでなくても構いません。むしろ途中でやるほうが効きます。

要件定義が終わった時点、テストが始まる前。この時点でふりかえると、出てきた改善をこのプロジェクトで使えます。終わってからのふりかえりは、次のプロジェクトのためのものですが、途中のふりかえりは今のためのものです。

長いプロジェクトなら、月に一度30分でも構いません。5.4で扱った反復型では、この短い周期のふりかえりが最初から組み込まれています。ウォーターフォールで進めていても、この部分だけ取り入れることはできます。

ひとりでもやれます

兼任やひとり情シスで、集める相手がいない場合もあります。それでもふりかえりには価値があります。

ひとりでやるときは、次の3つを書くだけです。予想と違ったこと。次も同じやり方をするか。次に1つだけ変えるとしたら何か。15分で終わります。

そして書いたものを残しておいてください。次のプロジェクトの立ち上げ時に読み返せば、それだけで前回と同じ失敗を避けられます。個人としての学び方は10.1で詳しく扱います。

ABではこう見えます

AB Projectsでは、ふりかえりの記録をプロジェクトWikiに置いておけます。日付と、出た話と、決めた1つ。これが数プロジェクトぶん溜まると、自分たちの弱点の傾向が見えてきます。

そして「次に変える1つ」は、次のプロジェクトのタスクとして登録するのがいちばん確実です。記録の中に書いただけでは、次の立ち上げのときに誰も読み返しません。タスクとして置いておけば、期日が来たときに表に出ます。

このページで使った言葉

ふりかえり
進め方そのものを見直す場です。アジャイルの文脈ではレトロスペクティブとも呼ばれます。くわしく →
KPT
Keep・Problem・Tryの3つに分けてふりかえる進め方です。日本のチームで広く使われています。くわしく →
教訓
次回に活かすために残す学びです。具体的に書き、次のプロジェクトが見つけられる場所に置いて初めて機能します。くわしく →
根回し
会議の前に個別に話しておくことです。最初に話す人に事前に頼んでおくのは、その良い使い方です。くわしく →
スプリント
反復型で使う、短い固定期間です。区切りごとのふりかえりが最初から組み込まれています。くわしく →
課題
すでに起きていて、対処しないと進まない事柄です。ふりかえりで出た改善案は、課題ではなくタスクにします。くわしく →

7.3 知識の引き継ぎ

ふりかえりの記録を、どこに置いておくか。

10.1 続けて伸ばす

ひとりでやるふりかえりと、その記録の使い方。

8.2 失敗から学ぶ

崩れたプロジェクトが、内側からどう見えていたか。


公開日: 2025-01-13 最終更新日: 2026-07-28

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