第7章 ← 目次にもどる
終わらせ方が、次のプロジェクトの費用を決めます
終結は、いつも軽く扱われます。納品が済めば気持ちの上では終わっていますし、次の案件はもう始まっている。そして飛ばしても、今日は誰も困りません。困るのは半年後で、しかも困るのは次のプロジェクトです。
この記事の要点
- この章は、引き渡し(7.1)・ふりかえり(7.2)・知識を残す(7.3)の3つです。
- 3つとも、放っておいても今日は誰も困りません。だから確実に飛ばされます。
- 対策は意志ではなく段取りです。計画の段階でタスクとして置いておいてください。
- 終結を雑にしたつけは、次のプロジェクトが同じところでつまずく形で払われます。
- とくに兼任で回している人ほど、ここが飛びます。次の案件がもう始まっているからです。
この章の3つ
飛ばされるのは、構造の問題です
1.3で書いた力学が、ここでもそのまま働きます。今日やらなくても、今日は誰も困らない。
検収が滞れば経理が催促してきます。引き継ぎがなければ、いずれ運用担当が困って連絡してきます。ところが、ふりかえりをやらなくても誰も連絡してきません。知識を書き残さなくても、今日は何も起きません。
だから、意志の強さや意識の高さで解こうとすると必ず負けます。解き方は段取りだけです。計画をつくる段階で、終結の作業をタスクとして日付つきで置いておく。2.2でWBSに「渡すもの」という枝を立てたのは、ここにつながっています。
つけを払うのは、次のプロジェクトです
終結を雑にしたコストは、そのプロジェクトの決算には出てきません。出てくるのは次です。
- 引き継がなかったので、運用の問い合わせが自分に来る。次の案件の時間が削られます。
- ふりかえらなかったので、次も同じところでつまずく。要件確認の甘さも、他部署の待ちも、前回と同じです。
- 知識を残さなかったので、半年後に「なぜこうなっているのか」が誰にも分からない。改修の見積りが跳ね上がります。
どれも見積書には載りません。載らないので、削っても怒られません。ここが構造的にやっかいなところです。
兼任で回している人ほど、飛びます
専任のプロジェクトマネージャーであれば、案件が終われば次の立ち上げまでに多少の間があります。兼任の場合、その間がありません。定常業務が待っていて、次の案件はもう始まっています。
だからこそ、終結の作業はプロジェクトが始まった時点で予定表に入れておくべきものです。「◯月◯日にふりかえり」を半年前から入れておけば、その日は空きます。終わってから調整しようとすると、誰の予定も空いていません。
そして最低限やるなら、ふりかえりだけは30分でも取ってください。引き継ぎと知識の記録は、必要になったときに誰かが困るので、遅れながらでも進みます。ふりかえりだけは、やらなければ永遠にやりません。
ABではこう見えます
AB Projectsでは、終結の作業も他と同じタスクとして扱えます。計画時に「検収依頼」「運用引き継ぎ」「ふりかえり実施」「記録の整理」を期日つきで置いておけば、期日が来たときに他の作業と同じように表に出ます。
そして書き残す先が同じ場所にあることが効きます。プロジェクトWikiに残した記録は、プロジェクトが閉じたあとも検索できます。7.3で扱いますが、次のプロジェクトの立ち上げでこれを読み返せると、経験が個人の記憶ではなく組織の資産になります。
このページで使った言葉
- 終結
- プロジェクトを正式に終わらせる区間です。受け取ってもらい、運用する人へ渡しきり、記録を残すまでが含まれます。くわしく →
- 検収
- 納めたものを相手が確認し、正式に受け取ることです。社外案件では支払いの起点になります。くわしく →
- 引き継ぎ
- つくったものを日々動かす人へ渡すことです。相手が自分で一度通せる状態にすることが完了条件です。くわしく →
- ふりかえり
- 進め方そのものを見直す場です。解散する前にやること、反省会にしないことが条件です。くわしく →
- 属人化
- 特定の人しか分からない状態です。引き継ぎと記録が薄いと、プロジェクトが終わっても解消しません。くわしく →
- 兼任
- 本業を持ったまま別の役割も担うことです。終結が飛びやすい典型的な条件になります。くわしく →