第10章 10.2 ← 10.0 まとめと次の一歩
資格は、目的を決めてから選びます
プロジェクト管理の資格は、取れば仕事ができるようになるものではありません。すでにできることを、説明しなくても伝わる形にする道具です。だから、誰に何を伝えたいのかが決まっていないと、選びようがありません。
この記事の要点
- 国内で実際に選択肢になるのは、IPA プロジェクトマネージャ試験・PMP・P2Mの3つです。
- IPA試験は受験条件なし・受験手数料7,500円(税込)。直近の合格率は14.3%。
- IPA試験はいま制度が変わる途中です。2026年度でCBT化、2027年度から新制度へ。
- PMPは実務経験3〜5年+35時間の研修が受験条件。国際的な通用性が利点です。
- 資格より先に、10.1の回し方を始めるほうが、たいていの人には効きます。
先に決めること
「プロジェクト管理の資格、何を取ればいいですか」と聞かれたら、いつも逆に聞き返しています。誰に何を伝えたいですか、と。
- いまの会社での評価や昇進に効かせたい → 社内の資格手当や昇格要件の一覧を先に見てください。国内の大手SIerや情報システム部門では、IPAの高度試験が要件に入っていることがよくあります。
- 転職のときに書類で落とされたくない → 応募先が国内中心ならIPA、外資や海外案件が絡むならPMPが通りやすい傾向があります。
- 体系的に学び直したい → 資格は手段としては高価です。10.1の回し方と本1冊のほうが安く済みます。
3つ目が本音なら、資格は後回しでかまいません。受験料そのものより、数百時間の勉強時間のほうが高くつきます。
3つを並べて比べる
IPA プロジェクトマネージャ試験
情報処理技術者試験の高度区分の1つで、経済産業省が定める国家試験です。国内、とくに発注側の情報システム部門や大手SIerでは、もっとも説明が要らない資格です。昇格要件や資格手当の対象に入っている会社も少なくありません。
受験に条件はなく、誰でも申し込めます。受験手数料は7,500円(消費税込)。直近の合格率は14.3%(令和7年度秋期、受験者8,511人・合格者1,219人。IPA、2025年12月25日発表)。
難所は論述式です。制限時間内に、自分が関わった案件について指定された観点で2,000字前後を手書きで書きます。知識よりも、自分の経験を型に当てて説明できるかが問われます。ここは10.1の書き残しがそのまま効いてきます。
受ける前に知っておくべき制度変更
この試験は、いま大きく変わっている途中です。2026年7月時点で公表されている範囲では、次のようになっています。
- 2026年度(令和8年度)からCBT化。応用情報技術者試験・高度試験・情報処理安全確保支援士試験が対象で、区分名が「午前I/午前II/午後I/午後II」から「科目A-1/A-2/B-1/B-2」に変わります。試験時間と出題範囲は変わりません。
- PM試験は2026年度の後期。申込は2027年1月27日〜2月27日、科目Aが2027年2月20日〜3月2日、科目Bが3月16日〜3月28日の期間で実施されます。前期(2026年11月)にPM試験はありません。
- 現行制度は2026年度の実施をもって終了予定。2027年度からは、応用情報と高度試験が「プロフェッショナルデジタルスキル試験」(仮称)に再編され、PMは「マネジメント」区分に入る見込みです。名称は2026年6月末時点でまだ仮称のままです。
つまり、いまの形で受けられるのは2027年3月が最後になる見込みです。取るつもりがあるなら、この回を狙うか、新制度の内容が固まるのを待つかの判断が要ります。(出典:IPA公表資料。2026年7月時点)
PMP(PMI)
米国のPMI(Project Management Institute)が認定する国際資格です。外資系企業や、海外拠点・海外ベンダーと組む案件では、説明しなくても通じるのが最大の利点です。
受験には条件があります。学歴に応じて3〜5年(36〜60か月)のプロジェクト指揮の実務経験と、35時間の研修が必要です。四年制大学卒であれば36か月、高卒相当では60か月というのが基本線です。CAPMを保有している場合は35時間の研修が免除されます。
合格率は公表されていません。試験は選択式で、通年いつでも受けられます。更新制で、3年ごとに一定量の継続教育(PDU)が必要になる点も、IPA試験との大きな違いです。
受験料と日本国内の保有者数については、PMIの一次資料で確認できる形の公表がなかったため、この記事では数字を載せていません。ネット上でよく見る金額や人数は、多くが研修会社の記載か、会員限定資料の孫引きです。受験を検討する際は、必ずPMIの公式ページで最新の金額を確認してください。
P2M(PMAJ)
日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が運営する、日本発の体系です。単一のプロジェクトだけでなく、複数の案件を束ねて事業目的につなげるという考え方(プログラムマネジメント)が中心にあります。
資格は段階制で、PMCe → PMC → PMS → PMQ → PMR → PMA という並びです(PMAは未実施)。入口として現実的なのはPMSで、受験条件はなく、CBTで100問150分。年3回(6月・10月・2月)実施されます。受験料は39,270円(税込)です。上位のPMQ(55,000円)、PMR(165,000円)は記述式と面接による審査が入ります。(出典:PMAJ公表資料。2026年7月時点)
知名度はIPAやPMPほどではありませんが、PMOで複数案件を見る立場や、事業側と近いところで働く人には、扱っている範囲が合っています。
正直に言うと
資格を持っていることと、案件を最後まで運べることは別の能力です。これは資格を軽んじているのではなく、試験で測れる範囲がそもそも違うという意味です。
論述式のIPA試験は、経験を型に当てて説明する力を測ります。これは実務でも効きます。一方で、8.2で見た「言いにくいことを言う」場面のふるまいは、どの試験でも測れません。
だから順番としては、10.1の回し方を始めてから、必要になったときに資格を取るのが無駄がありません。逆順にすると、勉強はしたのに現場で使えない、という一番もったいない形になります。
ABではこう見えます
IPA試験の論述式では、自分が関わった案件の背景・課題・とった対策・結果を、制限時間内に組み立てて書きます。ここでいちばん困るのが、数年前の案件の詳細を思い出せないことです。
AB Projectsのように案件の記録が残る場所があれば、当時の課題と対応がそのまま材料になります。10.1で書いた4行の記録は、実は論述対策としてもよくできています。
このページで使った言葉
- PMO
- 複数のプロジェクトを横から支える組織や役割です。P2Mが扱う範囲と重なります。くわしく →
- 商流
- 発注元から実際に手を動かす会社までの取引の連なりです。どの位置にいるかで、効く資格が変わります。くわしく →
- 体制
- 誰がどの役割を持つかの並びです。論述式では、まずこれを説明できることが前提になります。くわしく →
- ふりかえり
- 進め方そのものを見直す場です。ここで書いた記録が、論述式の材料になります。くわしく →
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