6.1 「完了しました」が指す4段階|完了の定義の決め方

6.1 「完了しました」が指す4段階|完了の定義の決め方

第6章 6.1 ← 6.0 進捗の追い方

「完了しました」が、同じものを指していません

プロジェクトの終盤で「あと1週間です」が3か月続くことがあります。誰も嘘をついていません。「完了」という言葉が、話す人によって別のところを指しているだけです。この段差は、最初に一文決めておけば消えます。

はじめてこのページに来た方へ このページは全10章のチュートリアルの6.1です。章全体は6.0、進捗率が当てにならない理由は2.3で扱っています。専門用語はすべてページ下部で説明しています。

この記事の要点

  • 「完了」には4段階あります。動いた/テストが通った/業務で使える/検収が通った。
  • 開発側は1か2、依頼側は3か4を思い浮かべます。どちらも嘘ではありません。
  • プロジェクトの最初に「このプロジェクトでの完了は4番です」と一文決めるだけで、段差は消えます。
  • 成果物の確認は、まとめてやらず、できたものから順にやります。
  • 受入テストを終盤にまとめると、そこが最大の詰まりになります。

「完了」の4段階

ひとつの機能について、次の4つはすべて「完了しました」と言える状態です。ただ、意味はまったく違います。

「完了」が指す4つの段階と、開発側・依頼側の認識の差 完了には4段階あります。1は動いた、手元では通った状態。2はテストが通った、想定した範囲では通った状態。3は業務で使える、実データ・実運用で使える状態。4は検収が通った、相手が受け取った状態です。開発側は1か2を、依頼側は3か4を「完了」と考えており、この差がそのまま「あと1週間です」が3か月続く理由になります。 1 動いた 手元では通った 2 テストが通った 想定した範囲では 3 業務で使える 実データ・実運用で 4 検収が通った 相手が受け取った 開発側の「完了」 依頼側の「完了」 この差が、そのまま「あと1週間です」が3か月続く理由です 同じ「完了しました」でも、指しているところが違います。開発側は1か2、依頼側は3か4を思い浮かべます。 どちらも嘘をついていません。だから会話は噛み合い、認識だけがずれ続けます。プロジェクトの最初に 「このプロジェクトでの完了は4番です」と一文だけ決めておけば、この段差は消えます。
階段を左下から右上へ登ってください。段が上がるほど、他人が判定できる度合いが上がります。上のオレンジの括弧が、2つの立場のあいだにある距離です。この距離のぶんだけ、終盤に作業が残ります。

最初に、一文だけ決める

対処は単純です。プロジェクトの立ち上げ時に、「このプロジェクトで完了と言えるのは、どの段階か」を一文で書いておきます。

「本プロジェクトにおける完了とは、実データを用いた業務部門の確認が終わり、検収書を受領した状態を指します。」

これを2.1のA4一枚に入れておけば、全員が同じ意味で「完了」を使えます。書くのに30秒、効き目は数か月です。

さらに実務的には、段階ごとに別の言葉を使うのが有効です。「実装完了」「テスト完了」「業務確認完了」「検収完了」。同じ「完了」でも前に何がつくかで区別できます。日本の現場では、この4語がすでに使われていることが多いので、揃えるだけで済みます。

「完了の定義」は、成果物の種類ごとに違って構いません

画面の完了と、移行データの完了と、マニュアルの完了は、当然ちがう条件です。ひとつに揃える必要はありません。大事なのは成果物ごとに一行書いてあることです。書き方の目安は「誰が見て、何が確認できたら終わりか」。判定する人の名前が入っていれば、それはかなり良い定義です。

確認は、まとめずに順次やる

もうひとつ、日本の現場でよく起きるのが確認の集中です。作るものが全部できてから、まとめて受入テストを始める。その結果、終盤の2週間に指摘が集中し、直す時間が足りなくなります。

これは1.2の費用曲線そのものです。同じ指摘でも、早く出れば安く、遅く出れば高い。まとめて確認する設計は、意図的にすべての指摘を右端に集めていることになります。

対処は、できたものから順に見てもらうことです。全部そろっていなくても、画面が3つできたら3つ見てもらう。移行データができたら、1000件だけ確認してもらう。相手の手間は増えますが、増える手間より減る手戻りのほうがずっと大きくなります。

相手が忙しくて時間が取れない場合は、短くしてください。30分の確認を月に1回より、10分の確認を週に1回のほうが効きます。

数えるのは、4段目に到達したものだけ

2.3で書いた「終わったものを数える」は、この4段階で言えば4段目に到達したものだけを数えるという意味です。

1段目や2段目のものを「終わった」に入れると、実態より進んで見えます。そして残りの作業——実データでの確認、指摘の対応、検収——が、計画のどこにも載っていない状態になります。これが終盤に一気に出てきます。

厳しく感じるかもしれませんが、この数え方をすると初期は数字が伸びません。それが実態です。伸びないことに早く気づけば、早く手が打てます。

受入テストは、相手の仕事です

日本の受託開発では、受入テスト(UAT)は発注側が行うのが基本です。ここで実務上よく起きるのが、相手側の体制が組まれていないという問題です。

先方の担当者は通常業務を抱えていて、確認のための時間が確保されていない。結果、テスト期間として2週間取ってあるのに、実際に確認が始まるのは最終週になります。

これは3.4で扱うリスクとして、右上に置くべきものです。打ち手も明確で、相手側の確認担当と日程を、こちらから早めに押さえておくことです。「◯月◯日から2週間、どなたが確認されますか」を計画段階で聞いておくだけで、状況がかなり変わります。

ABではこう見えます

AB Projectsでは、完了の定義をタスクの説明欄やプロジェクトWikiに書いておけます。タスク名を2.2のとおり名詞で書いていれば、「承認された要件定義書」のように、名前自体が完了条件を示します。

ボードの列を「実装完了」「業務確認待ち」「検収待ち」まで作っておくと、4段階のどこに何件あるかが一目で分かります。5.2で書いたとおり、待ちの列に札が溜まっていれば、それが詰まりの正体です。

このページで使った言葉

完了の定義
何をもって「終わった」とするかの取り決めです。「誰が見て、何が確認できたら終わりか」で書くと機能します。くわしく →
受入テスト(UAT)
発注側が、業務で使えるかどうかを確認するテストです。相手側の体制と日程を早めに押さえておく必要があります。くわしく →
検収
納めたものを相手が確認し、正式に受け取ることです。4段階のいちばん上にあたります。くわしく →
成果物
相手が受け取れる形になった結果です。完了の定義は、成果物ごとに違って構いません。くわしく →
手戻り
先の工程に進んだあとで前の工程に戻ってやり直すことです。確認をまとめると、まとめて発生します。くわしく →
進捗
計画に対してどこまで進んだかです。4段目に到達したものだけを数えると、実態に近づきます。くわしく →

6.2 課題と変更の管理

確認で出てきた指摘を、どう扱うか。

2.2 WBSの作り方

末端を名詞で書くと、完了条件が名前に入ります。

7.1 引き渡し

4段目を超えたあと、まだ残っているもの。


公開日: 2025-01-08 最終更新日: 2026-07-28

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