4.3 プロジェクトの伝え方|誰に何をどの頻度で

4.3 プロジェクトの伝え方|誰に何をどの頻度で

第4章 4.3 ← 4.0 チームと関係者

全員に同じ資料を送るのは、伝えたことになりません

「ちゃんと共有したはずなのに、聞いていないと言われる」。これは相手の落ち度ではなく、伝え方の設計がないだけです。誰に、何を、どの頻度で、どういう形で。この4つを先に決めておくと、伝わらない問題の大半が消えます。

はじめてこのページに来た方へ このページは全10章のチュートリアルの4.3です。誰に伝えるべきかは4.2、報告書の書き方は6.3で扱っています。専門用語はすべてページ下部で説明しています。

この記事の要点

  • 相手によって知りたいことが違います。同じ資料を全員に送っても、誰の役にも立ちません。
  • 決裁者が知りたいのは「間に合うか」と「何を決めればいいか」の2つだけです。
  • 定例は情報を配る場ではなく、言いにくいことが言える場として設計します。
  • 議事録は記録ではなく、合意の範囲を確定する文書です。だから当日中に出します。
  • 悪い知らせは、早く・小さく・次にいつ言うかとセットで伝えます。

伝え方の設計は、1枚の表で足ります

コミュニケーション計画という言葉は大げさですが、中身はこれだけです。プロジェクトの最初に15分で作れます。

相手ごとの伝え方の設計表 決裁者は間に合うのかと決めることは何かを知りたく、月1回、短い報告を3行で。発注元の担当者は予定どおりかと判断が要ることを知りたく、週1回、定例と議事録で30分。チームはいま止まっているものを知りたく、週1回、ボード確認を10分。業務部門は自分たちの仕事がいつどう変わるかを知りたく、節目ごとに説明会と資料で45分。運用担当は引き継ぐときに何を渡されるのかを知りたく、月1回、短い打ち合わせを20分。 相手 知りたいこと 頻度 長さの目安 決裁者 間に合うのか、決めることは何か 月1回 短い報告 3行 発注元の担当者 予定どおりか、判断が要ることは何か 週1回 定例+議事録 30分 チーム いま止まっているものは何か 週1回 ボード確認 10分 業務部門 自分たちの仕事がいつどう変わるか 節目ごと 説明会と資料 45分 運用担当 引き継ぐときに何を渡されるのか 月1回 短い打ち合わせ 20分 全員に同じ資料を送るのは、伝えたことにはなりません。読まれない資料は、送っていないのと同じです。 列は左から右へ、「誰が」「何を知りたいか」「どのくらいの頻度で」「どういう形で」です。2列目が 相手ごとに違うことに注目してください。同じ進捗でも、決裁者と運用担当では聞きたいことが違います。
2列目だけを縦に読んでみてください。5人が知りたいことは、まったく違います。この違いを無視して同じ進捗資料を配ると、5人とも「自分に関係のない資料」として読まなくなります。

決裁者に長い資料を送るのは、親切ではなく怠慢です。読む時間がないことは分かっているので、実質的には「読まなくていい」と言っているのと同じになります。

この人が知りたいのは、突き詰めると2つだけです。間に合うのか。私が決めることは何か。だから3行で書けます。

・3月末の稼働は、現時点で見通しどおりです。

・データ移行の範囲について、2月10日までにご判断をお願いします(A案/B案は別紙)。

・次回の報告は2月20日です。

3行目が地味に効きます。次にいつ聞けるかが書いてあると、その間は聞かれません。書いていないと、不安になった時点で細かい質問が来ます。

定例は、情報を配る場ではありません

日本の現場では、定例が事実上の統制の仕組みになっています。だからこそ、設計の仕方で価値が大きく変わります。

よくないのは、参加者が順番に近況を話す形式です。30分かかり、全員が自分の番以外は聞いておらず、そして言いにくいことは出てきません。順番に話す形式は、悪い報告をするのに勇気が要りすぎます。

効くのは、2.3でも触れた「ボードを一緒に見て、止まっているものだけを聞く」形です。10分で終わります。そして人は「遅れています」とは言いにくくても、「これは○○さんの回答待ちです」なら言えます。言い方の敷居を下げる設計です。

もうひとつ、日本の定例で意識しておくとよいのは、その場で決まらないことが多いという前提です。持ち帰りが発生するのは普通のことなので、「では、いつまでに誰が回答しますか」を必ず聞いて終わります。これがないと、持ち帰ったまま消えます。

議事録は、当日中に出す

日本の実務で、議事録は単なる記録ではありません。合意の範囲を確定する文書として機能します。あとで解釈が割れたとき、拠りどころになるのは記憶ではなく議事録です。

だから2つのことが大事になります。

ひとつは速さです。当日中、遅くとも翌日中に出してください。時間が経つと、参加者の記憶がそれぞれの都合のいい形に固まってしまい、訂正が交渉になります。当日なら、まだ全員の記憶が同じです。

もうひとつは曖昧な言葉を具体化しておくことです。会議で「移行完了までに対応します」と言われたなら、議事録には「移行完了(=3営業日の並行稼働が終了した時点)までに対応」と書きます。ここで一度確認が入ります。その30秒が、あとの3週間を防ぎます。

議事録に必ず入れる4つ

決まったこと(と、その理由)/決まらなかったこと(と、いつ誰が決めるか)/持ち帰り(誰が・何を・いつまでに)/次回の日程。発言の記録は要りません。誰が何と言ったかより、何が決まって何が決まらなかったかのほうが、あとで必要になります。

悪い知らせの、伝え方

これは9.2でも扱いますが、伝え方の設計としてここでも書いておきます。悪い知らせには、決まった形があります。

事実 → 影響の大きさ → いつ次に言うか。この3つを、早く、小さいうちに。

「共有です。データ移行が3日ほど遅れています。いまのところ稼働日には影響しません。取り戻す手を打っていて、木曜日に見通しをまたお伝えします。」

この形にすると、相手から追加の質問が出ません。知りたいことが全部書いてあるからです。逆に「遅れています」だけだと、「どのくらい」「間に合うのか」「どうするのか」と3往復します。3往復するあいだに、話が大きくなります。

そして早く言うことが何より効きます。三日の遅れを三日目に言えば情報ですが、一か月黙ってから言うと事件になります。中身は同じなのに、受け取られ方が変わります。

ABではこう見えます

AB Projectsでは、議事録をプロジェクトWikiに置き、そこで決まったことをタスクとして切り出す形が自然です。「誰が・何を・いつまでに」がそのままタスクの形なので、議事録から抜け落ちません。

定例の材料も、資料を作らずボードをそのまま見るのがいちばん速く、そして正確です。報告のために資料を作ると、資料のための作業が発生し、しかもその資料は実態より少しきれいになります。

このページで使った言葉

議事録
打ち合わせの記録ですが、日本の実務では合意の範囲を確定する文書です。当日中に出すこと、曖昧な語を具体化することが要点です。くわしく →
定例
決まって開かれる打ち合わせです。情報を配る場ではなく、言いにくいことが言える場として設計します。くわしく →
持ち帰り
その場で決めず、自分の組織に相談することです。発生した時点で「誰が・いつまでに」を決めておかないと消えます。くわしく →
報連相
報告・連絡・相談の略です。伝え方の設計とは、この3つがどこで起きるかを決めることでもあります。くわしく →
進捗
計画に対してどこまで進んだかです。相手によって、知りたい粒度がまったく違います。くわしく →
エスカレーション
自分の権限で決められないことを、決められる人に上げることです。悪い知らせの伝え方は、その入口になります。くわしく →

6.3 報告の書き方

短い報告で、悪い知らせを扱えるようにする方法。

4.2 関係者との付き合い方

そもそも、誰に伝えるべきなのか。

5.0 道具の選び方

伝える仕組みを、どの道具に持たせるか。


公開日: 2024-12-29 最終更新日: 2026-07-28

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