1.1 LLMとは - 大規模言語モデルの基本構造とトランスフォーマーモデルの解説

前のセクションでは、第1章「LLM入門 - 大規模言語モデルの仕組みと数学的アプローチの解説」の全体像について紹介しました。具体的にLLMとは何かを説明していきます。なお、LLMの基礎についてより詳しく学びたい方は、LLMの入門(上): 「LLM入門: 自然言語処理における大規模言語モデルの基本と応用も併せて読むことをおすすめします。なお、LLMの基礎についてより詳しく学びたい方は、『LLM入門: 自然言語処理における大規模言語モデルの基本と応用』も併せて読むことをおすすめします。

LLM(大規模言語モデル)は、現代のAI技術の中でも特に注目されている技術です。自然な言葉を作り出し、大量のデータから学習する能力を持っています。

ここでは、エンジニア向けにLLMの仕組みを数学的な視点から解説します。確率論や線形代数といった基礎知識を活用しながら、LLMがどのように動作しているのかを説明していきます。

LLMに関する理論や技術は広範ですが、特に重要な部分に焦点を当てて解説します。トランスフォーマーモデルや勾配降下法といった技術に触れながら、LLMがどのように学習し、言葉を生み出しているのかを解説します。

1.1 LLM(大規模言語モデル)とは

LLMは、自然言語処理(NLP)の分野で用いられる強力なAI技術で、特に大量のデータを基に言語を理解し、生成する能力に優れています。従来のモデルと異なり、LLMは数十億から数兆のパラメータを持つ巨大なモデルであり、大量のテキストデータから学習することで、より精度の高い言語生成を実現します。

1.1.1 LLMの仕組み

LLMは、大量のデータをもとに学習し、言語のパターンを理解します。学習には教師あり学習や自己教師あり学習の手法が用いられ、単語や文の意味的なつながりを学び取ります。特に、次にくる単語を予測する「言語モデル」としての機能が重要です。

LLMの学習には、大規模なデータセットを使用し、単語や文のコンテキストを深く理解するために、複数の層を持つニューラルネットワークが利用されます。事前学習とファインチューニングの2段階に分かれており、事前学習では膨大なコーパスを使って一般的な言語のパターンを学習し、ファインチューニングでは特定のタスクに適応するように追加学習が行われます。

1.1.2 トランスフォーマーアーキテクチャ

LLMの中核技術として最も注目されているのが「トランスフォーマーアーキテクチャ」です。このアーキテクチャは、セルフアテンションメカニズムを基に、テキスト中の単語同士の関連性を効率的に捉えることができるため、高い性能を発揮します。従来のリカレントニューラルネットワーク(RNN)に比べ、トランスフォーマーは並列処理が可能であり、大規模なデータセットでも効率的に学習を進めることができます。

トランスフォーマーは、エンコーダー・デコーダー構造を持ちますが、GPTのようなモデルはデコーダーのみを使用し、BERTのようなモデルはエンコーダーのみを利用するなど、目的に応じた使い分けがされています。セルフアテンション機構により、各単語が文の他の単語との関係を適切に捉えることで、高い精度の言語生成を実現しています。

1.1.3 LLMの主な応用

LLMの代表的な応用例としては、チャットボット、テキスト生成、機械翻訳、質問応答システムなどが挙げられます。特に、GPT(Generative Pretrained Transformer)シリーズは、自然で流暢な文章を生成できるモデルとして広く知られています。このようなモデルは、検索エンジンの結果を生成するためや、カスタマーサポートの自動化などにも活用されています。

また、LLMは医療や法務、金融などの専門分野でも活用が進んでおり、大量の文書を解析して要点を抽出するタスクや、文書の自動分類、法律文書の解釈支援などの用途でも用いられています。

次のセクションでは、「本入門の目的と対象読者」について詳しく解説しています。

公開日: 2024-10-05
最終更新日: 2025-02-18
バージョン: 10

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。