従来のプロンプト設計とMCPの違いとは?|MCP入門 2.2|生成AI設計の新常識

2.2 従来のプロンプト設計との違い

ChatGPTやClaude、Geminiなどの生成AIが普及する中で、誰もが一度は「プロンプトの工夫」について考えたことがあるはずです。 たとえば以下のような定番手法は、いわゆる従来型のプロンプト設計の代表例です:

  • 「あなたはプロの編集者です」と前置きを入れる
  • 出力形式を指定する(例:「3つの箇条書きで答えて」)
  • 直前の文脈を繰り返しプロンプトに含める
  • 一貫したトーンや言葉遣いを保つための工夫

これらはとても有効で、今なお多くのユースケースで活用されています。 しかし、プロダクトに組み込む・自動化する・継続的な対話を設計するとなると、従来のプロンプト設計だけでは限界があるのです。

プロンプトの限界:その場しのぎの“命令文”

従来のプロンプト設計の特徴は、「その都度、入力時に命令を書いておく」という点です。 つまり、どんな立場で、どんな背景で、何を目的に応答してほしいかを、毎回プロンプトの中に埋め込んでいました。

これは以下のような問題を引き起こします:

  • 冗長化: 毎回同じような前置き・設定を繰り返す必要がある
  • スケーラビリティの欠如: ユーザーごとの設定や状態の切り替えが難しい
  • 再現性の低さ: 出力にばらつきが出やすく、テストが困難
  • 状態をまたげない: セッションを超えて記憶を維持するのが難しい

このような問題は、個人利用ではそこまで気にならないかもしれませんが、 企業向けアプリや業務用ツールにおいては、“信頼できる振る舞い”の実現にとって致命的です。

MCPの視点:文脈と状態を分離し、再現可能にする

Model Context Protocol(MCP)は、従来のプロンプト設計を拡張・構造化し、 「命令」と「文脈」と「状態」を明確に分離するアーキテクチャです。

MCPの特徴的な違いは以下のとおりです:

項目 従来のプロンプト設計 MCP
文脈の扱い プロンプトに毎回埋め込む 別途管理・統合して挿入
状態管理 セッション内に依存 Persistentに定義・操作可能
構造 フラット(命令文+前置き) 構造化(System, Memory, Prompt)
再利用性 都度調整 テンプレート化・モジュール化可能
適用対象 短期的な会話 継続的な対話、業務処理

MCPでは、プロンプトに毎回同じ情報を繰り返すのではなく、文脈(Context)を別途管理し、必要に応じて統合して渡すという考え方を取ります。 これにより、会話の一貫性・応答の安定性・状態の継続性が格段に高まります。

AIを「構成」する時代へ

MCPの登場により、AIの開発は単なる「命令文を書く」フェーズから、「状態を構成し、振る舞いを設計する」フェーズに入りました。

これは、フロントエンド開発におけるHTML→Reactの進化や、サーバー構成における静的ページ→マイクロサービスへの移行と同じく、 拡張性と管理性のための構造化の流れです。

生成AIをプロダクトに組み込むなら、もはや従来のプロンプト設計では不十分です。 モデルが「どんな役割を持ち、どんな前提で、どんな状態のもとで出力しているのか」を、開発者自身が設計・制御できる構造が必要なのです。


MCPがなぜ必要なのか、その背景が見えてきたところで、次に注目したいのが「状態制御の力」です。 モデルの応答に“ブレ”がないようにするには、どのように状態を設計し、出力を再現可能にするのか? 次のセクションでは、MCPがもたらす安定性・テスト可能性・多ユーザー対応の観点から深掘りしていきます。 → 2.3 MCPによる状態制御・再現性の向上へ進む

公開日: 2025-03-09
最終更新日: 2025-05-10
バージョン: 6

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。

チーム

任 弘毅

株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。