1.2 LLM推論APIのスケーリング|水平スケーリング、ロードバランシング、キャッシュ戦略の実装

前のセクション「LLM API設計:FlaskとFastAPI」では、Pythonフレームワークを使用した基本的なAPI構築方法を紹介しました。次は、APIのスケーリングについて学びます。

1.2 LLM推論APIのスケーリング

LLM推論APIは、多くのリクエストを効率的に処理するために、スケーリングが不可欠です。このセクションでは、FastAPIやFlaskを使用したLLM推論APIのスケーリング方法について詳しく解説します。水平スケーリング、ロードバランシング、キャッシュ戦略など、パフォーマンスを向上させるための具体的な手法を紹介します。

水平スケーリングの導入

水平スケーリングとは、APIサーバーを複数立ち上げて、リクエストを分散させる方法です。以下は、Gunicornuvicornを使用したFastAPIの水平スケーリングの例です。


# Gunicornを使用したFastAPIの起動コマンド
gunicorn -w 4 -k uvicorn.workers.UvicornWorker main:app
        

このコマンドは、4つのワーカーでFastAPIアプリケーションを並行処理する設定です。-wオプションでワーカー数を設定し、uvicorn.workers.UvicornWorkerで非同期処理を可能にします。

ロードバランシングの設定

水平スケーリングと組み合わせて使用するのが、ロードバランシングです。NGINXを使用して、リクエストを複数のAPIインスタンスに分散させる設定例を紹介します。


http {
    upstream llm_api {
        server 127.0.0.1:8000;
        server 127.0.0.1:8001;
        server 127.0.0.1:8002;
    }

    server {
        listen 80;
        location / {
            proxy_pass http://llm_api;
            proxy_set_header Host $host;
            proxy_set_header X-Real-IP $remote_addr;
        }
    }
}
        

この設定では、llm_apiという名前で3つのAPIインスタンスにリクエストを分散しています。proxy_passでアップストリームにリクエストを送信し、ヘッダー情報を適切に設定しています。

キャッシュ戦略の導入

APIのパフォーマンスを向上させるために、キャッシュ戦略の導入が有効です。Redisを使用して、頻繁に使用される結果をキャッシュし、再計算を減らします。以下は、Redisを使用したキャッシュの例です。


import redis
from fastapi import FastAPI

app = FastAPI()
cache = redis.Redis(host='localhost', port=6379, db=0)

@app.get("/predict")
async def predict(input_text: str):
    cached_result = cache.get(input_text)
    if cached_result:
        return {"result": cached_result.decode("utf-8")}

    # 推論処理(仮の例)
    result = "LLMの推論結果"
    cache.set(input_text, result, ex=60)  # 60秒間キャッシュ
    return {"result": result}
        

この例では、Redisを使用して、入力テキストに対する推論結果をキャッシュしています。キャッシュがヒットした場合は、再計算せずに結果を返し、パフォーマンスを向上させます。

まとめ

LLM推論APIのスケーリングは、パフォーマンスの向上に重要です。水平スケーリング、ロードバランシング、キャッシュ戦略を組み合わせて使用することで、より多くのリクエストに対応し、ユーザー体験を向上させることができます。

次のセクション「1.3 キャッシュ戦略とパフォーマンス最適化」では、さらに詳しいキャッシュ設定とパフォーマンス向上のための手法を紹介します。

公開日: 2024-11-04
最終更新日: 2025-03-10
バージョン: 2

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。