2.1 LLM(大規模言語モデル)とは、人間の言葉を“理解しようとする”AIのしくみ

― 人間の言葉を“理解しようとする”AIのしくみ ―

私たちが誰かと会話をするように、AIと自然なやり取りができる――
そんな未来は、もはや「遠い話」ではなく、今この瞬間に実現されています。
それを可能にしているのが「LLM(大規模言語モデル)」と呼ばれるAIの仕組みです。

たとえば、以下のようなやり取りを見たことはありませんか?

あなた:「このメール、もっとやわらかい言い回しにして」
AI:「かしこまりました。次のようにしてはいかがでしょうか?」
『ご連絡ありがとうございます。ご対応いただけますと幸いです。』

これは、AIがただ定型文を貼り付けているのではありません。
「あなたの意図」と「文脈」を理解したうえで、次にくる適切な文章を“自分で考えて”出力しているのです。

LLMとは:大量の言語データから学習した超高性能なAI

LLM(Large Language Model)は、「大量のテキストデータ」をもとに学習したニューラルネットワーク型のモデルであり、人間のように自然な言葉を生成できるのが最大の特徴です。

モデル名 開発元 特徴
GPT-4 OpenAI 高精度・多用途。マルチモーダル対応。
Claude 2 Anthropic 長文処理・安全性に配慮。
LLaMA 2 Meta 軽量・高性能なオープンソースモデル。
Gemini 1.5 Google DeepMind 音声や動画にも対応するマルチモーダル設計。
Mistral Mistral AI 軽量化と効率に特化。

「言葉を理解する」とはどういうことか?

AIが「言葉を理解する」とは、「次にくる言葉を自然な形で予測する力」を持つということです。

たとえば「私はコーヒーを——」という文があった場合、LLMは次のように確率を予測します:

  • 飲んだ → 60%
  • 買った → 20%
  • 注いだ → 10%
  • 見た → 5%
  • 飛んだ → 0.1%

このように、最も自然な続きを確率的に選ぶことで「文脈を理解している」ように振る舞うのです。

従来のモデルとの違い:なぜLLMは圧倒的なのか?

従来のRNNやLSTMにも言語を扱う能力はありましたが、次のような限界がありました:

  • 長文の文脈を保持できない
  • 一文ずつしか処理できず非効率
  • 翻訳・分類など、用途ごとにモデルを分ける必要があった

LLMでは、トランスフォーマーという構造を使うことで:

  • 全体文脈を一度に把握
  • 並列処理で高速化
  • 1つのモデルで複数タスクに対応

LLMは何ができるのか?

LLMは、以下のような多様なタスクを1つのモデルでこなせます:

  • チャットボット(ChatGPTなど)
  • 翻訳(DeepL、Google翻訳など)
  • コード生成(GitHub Copilot)
  • 文章の要約や校正
  • FAQ応答・ナレッジ検索
  • 記事・レポート・メールの自動生成

要点まとめ

  • LLMとは:人間のように言葉を理解し生成できる、大規模なニューラルネットワークモデル。
  • 理解とは:「次にくる単語を自然に予測する」能力。
  • 技術的進化:トランスフォーマーにより、高速・高精度・汎用性を実現。
  • 応用範囲:チャット、翻訳、要約、コード生成など多岐にわたる。
このページのコンテンツは下記の本から抜粋

LLM入門:数学で理解する、大規模言語モデルの仕組み: 機械が言葉を理解する数学的な理由 (LLMマスターシリーズ)

機械が言葉を理解するのは、なぜか?――その“数学的な理由”を、やさしく、でも本質的に解き明かす一冊。ChatGPTをはじめとするLLM(大規模言語モデル)が、いかにして自然言語を理解し、生成しているのか?本書はその仕組みを、数式と直感をバランスよく交えて、深く、わかりやすく解説します。

1,815円 (税込み)

次のセクション「2.2 LLMの基本概念」では、こうしたLLMの中身を構成する「パーツ」や「キーワード」に焦点を当て、より技術的な理解へと進んでいきます。

公開日: 2024-10-06
最終更新日: 2025-05-26
バージョン: 7

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。

チーム

任 弘毅

株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。