RAGの限界と今後の展望とは?幻覚・検索精度・モデル進化にどう向き合うか|LLM入門 第7章

第7章 RAGの限界と、これから

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、ChatGPTをはじめとした大規模言語モデル(LLM)を「自社業務に使えるAI」へと進化させるための、現実的かつ強力なアプローチです。
ここまでの章では、その構造・ツール・設計・プロンプト最適化に至るまで、幅広くかつ実践的に解説してきました。

しかし、どれほど洗練されたRAGシステムであっても、万能ではありません。
本章では、実運用の中で明らかになる RAGの構造的な限界や課題 に向き合い、それを乗り越えるための発展的アプローチ──ハイブリッド検索、モデル側の進化、評価と改善のフレームワークなど──について検討していきます。

RAGは単なる「検索+生成」の技術ではなく、“適切な知識をモデルに渡す”という情報設計の思想です。
それゆえに、どこまでがRAGの役割で、どこからがモデルの責任なのか、そして今後どのように進化していくのかを冷静に見極めることが、持続的な運用と改善につながります。

この章では、次のような観点からRAGの限界と展望を整理します。

 

7.1 情報の過不足とLLMの「幻覚」対策

Retrieverの精度限界、曖昧な質問、曖昧な文書──それらが引き起こす誤回答の背景を分析し、幻覚(hallucination)を抑えるための設計と対応策を紹介します。

 

7.2 ハイブリッド検索・Multi-Vector RAGとは

キーワード検索と意味検索を統合する「ハイブリッド検索」や、複数の視点から情報を抽出する「Multi-Query / Multi-Vector」型のRAGについて、その利点と実装方法を解説します。

 

7.3 モデルの進化とRetrieval不要論の可能性?

GPT-4-128kやClaude 2、Gemini 1.5など、大規模な長文入力対応モデルの登場により、「検索せずに全部渡せばいい」という発想が生まれています。この流れの可能性と限界を考察します。

 

7.4 結局、RAGはどう使い続けるべきか

理想と現実を踏まえた上で、RAGの「実務における使いどころ」と「進化に合わせた設計戦略」を提示し、継続的な改善に向けた視座をまとめます。

 

この章を通じて、RAGという設計手法を「使い始める技術」から「使い続ける技術」へと深化させていきましょう。
それではまず、「7.1 情報の過不足とLLMの「幻覚」対策」から見ていきます。

公開日: 2025-03-03
最終更新日: 2025-05-25
バージョン: 3

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。

チーム

任 弘毅

株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。