LlamaIndexとは何か?RAGにおける文書インデックス構築の強みとLangChainとの違い|LLM入門 5.3

5.3 LlamaIndexの特徴と差別化ポイント

RAGを実装する際、LangChainと並んで注目されているもう一つの主要ツールが LlamaIndex(旧:GPT Index)です。LangChainが「LLMのための処理パイプライン」を設計するのに対し、LlamaIndexは「LLMが活用できるように文書を構造化する」ことに特化したライブラリです。

このセクションでは、LlamaIndexの設計思想と主要機能を解説しつつ、LangChainとの使い分け方や実務的な導入ポイントを紹介します。

 

LlamaIndexとは?

LlamaIndex は、RAG構成における文書処理とインデックス管理を抽象化し、以下のような機能を提供するオープンソースのPythonライブラリです:

  • 多様な文書ソースからのデータ取り込み(PDF, Web, Notion など)

  • チャンク分割とメタデータ付与

  • 複数形式のインデックス(Tree, List, Keyword Table, Vector)を生成

  • LLMへの問い合わせに最適な形で情報を整形・提供

  • ストレージ層(ファイル、DB、クラウド)との柔軟な連携

LlamaIndexはもともと「ドキュメント中心」のRAG構築を目的として開発されたため、**知識ベースを“構造的に育てていく”**という思想が色濃く反映されています。

 

LlamaIndexの構成概念

LlamaIndexの特徴的なアーキテクチャには、以下のようなレイヤーがあります:

  1. Document Loader
     外部文書(Markdown, PDF, HTML など)を読み込み、LlamaIndexの Document オブジェクトへ変換

  2. Node Parser(チャンク化)
     意味単位やトークン単位での柔軟な分割。メタデータや階層構造の付加も可能

  3. Index(インデックス化)
     Vector Index(ベクトル検索)だけでなく、List Index(逐次処理)や Tree Index(階層構造)も選択可能

  4. Retriever / Query Engine
     クエリに応じて、適切なチャンクを選択・整形してLLMに渡す

このように、LlamaIndexは「どの文書をどう保存し、どう取り出すか」を重視したツールであり、ドキュメント設計に強みがあると言えます。

 

LangChainとの違いと使い分け

LangChainとLlamaIndexは、併用することも可能ですが、次のような使い分けが一般的です。

比較項目 LangChain LlamaIndex
主目的 パイプライン構成・ツール連携 文書インデックスの構築と検索
検索設計 Retriever中心 Index + Query Engine 中心
フレームワーク性 汎用性・拡張性が高い 文書構造の抽象化が強い
導入フェーズ PoC開発・統合開発に向く 本番想定のナレッジ整備に向く
学習曲線 やや高め 比較的緩やか(例が豊富)

組み合わせる場合:
LlamaIndexで知識ベースを構築し、そのRetrieverをLangChainに組み込むことで、両者の利点を活かした設計が可能です。

 

特に効果的な用途例

LlamaIndexは以下のようなケースに強みを発揮します:

  • 文書が多階層構造で管理されており、目次や章立てを維持した検索が必要な場合

  • 文書の更新や追加が頻繁にあり、インデックスの再構築・差分更新が求められる場合

  • 単なるベクトル検索だけでなく、「条件付きリスト」や「章単位の照会」など複数の参照手段が欲しい場合

  • 検索結果に対して、元の文書構造やファイル名、タグなどのメタ情報を含めて回答させたい場合

 

補足:データのライフサイクルを意識した設計へ

LlamaIndexは、RAGの一部であるRetriever構成を“運用視点”から見直すことを促してくれるツールです。

  • 文書をどこから取得し、どう構造化し、どう保持するか

  • どんなクエリに、どの粒度で、どんな順序で答えるか

  • 変更があったとき、どう反映させるか

こうした設計を支援するという点で、LlamaIndexはRAGシステムをデータ運用の観点から整備するための実用的フレームワークであると言えるでしょう。

 

Azure・Elasticなど代替インフラの選択肢

本セクションでは、LlamaIndexが提供する柔軟なインデックス管理と、LangChainとの違いや併用方法について解説しました。
次のセクション「5.4 Azure Cognitive SearchやElasticなど代替案」では、クラウド基盤やエンタープライズ向けに広く採用されている Azure Cognitive Search や ElasticSearch などの選択肢を取り上げ、より広範なRAG設計の可能性を考察します。

公開日: 2025-02-24
最終更新日: 2025-05-25
バージョン: 2

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。

チーム

任 弘毅

株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。