1.3 情報量とエントロピー ― モデルの“迷い”を数学で読む

公開日: 2024-10-04 最終更新日: 2026-08-24 バージョン: 7
1.3 情報量とエントロピー ― モデルの“迷い”を数学で読む

1.3 情報量とエントロピー ― モデルの「迷い」を数式で見る

LLM(大規模言語モデル)は、次の単語をどう予測するかを考えるモデルです。

たとえば「その猫はとてもかわい」に続く言葉として、

  • 「い」 → 80%
  • 「そう」 → 20%

この場合、モデルは“あまり迷っていない”状態です。一方、どちらも 50% なら、モデルは“どちらにするか迷っている”ことになります。

この「迷い」の度合いを表すのが、エントロピーです。

ひとことで言うと|「迷い」=確率のばらつき
エントロピーは、モデルの予測分布がどれだけ均等に散らばっているかを数値化したもの。分布が偏るほど自信が強く、均等に近いほど「迷っている」状態です。

情報量とは?

「情報量」は、その出来事がどれだけ“意外”かを数値化したものです:

$$ I(x) = -\log_2 P(x) $$

珍しい出来事ほど、情報量は大きくなります。

出来事 確率 P(x) 情報量 I(x)
晴れ(よくある) 0.90 約 0.15
雪(めったにない) 0.01 約 6.64

エントロピーとは?

エントロピーは、「どのくらい迷っているか」の平均的な指標です:

$$ H(X) = -\sum P(x) \log_2 P(x) $$

単語候補 確率 P(x) −log₂P(x) 貢献度
A 0.8 約 0.32 0.256
B 0.2 約 2.32 0.464
合計     0.720

クロスエントロピーとは?

クロスエントロピーは、モデルの予測が正解とどれだけズレているかを測る指標です:

$$ H(p, q) = -\sum p(x) \log_2 q(x) $$

p(x): 実際の正解ラベル
q(x): モデルの予測分布

モデルの学習では、このクロスエントロピーを最小化するように重みを調整します。

確率分布と「迷い」(エントロピー)確信が強い:P=[0.9, 0.1] H ≈ 0.47やや偏り:P=[0.7, 0.3] H ≈ 0.88最大の迷い:P=[0.5, 0.5] H = 1.00分布の偏りが小さいほど、モデルは次の単語を決めきれない=迷いが大きい。
押さえておきたいポイント|損失関数としての役割
クロスエントロピーは正解ラベルとモデル予測のズレを測る指標。学習ではこの値を最小化する方向にパラメータを更新します。

まとめ:モデルの「迷い」を数式で理解する

  • 情報量: 珍しい出来事ほど大きい
  • エントロピー: モデルの迷いの大きさ
  • クロスエントロピー: 予測と正解のズレ(損失関数)

このページは『LLM入門:数学で理解する、大規模言語モデルの仕組み』からの一部抜粋です。

数式の意味や導出、さらに深い数学的背景については、ぜひ書籍をご覧ください。

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下田 昌平
下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。

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