OpenAI Function CallingとMCPの関係とは?|MCP入門 2.4|生成AIの構造化出力と実装設計

2.4 実装例:OpenAI Function Callingとの関係性

これまでのセクションでは、MCP(Model Context Protocol)という設計思想が、いかにして文脈と状態の管理・再現性・一貫性を実現するかを見てきました。 ここからはその理論を、より具体的な技術に落とし込む段階に入ります。

現在、多くのLLMプラットフォームがMCP的な発想を実装レベルで取り入れていますが、その中でも特に注目すべき機能が、OpenAIのFunction Callingです。 このセクションでは、この機能がどのようにMCPの設計原則と関係し、現実のアプリケーションでどのように使われているのかを解説していきます。

Function Callingとは何か?

OpenAIのFunction Callingは、GPT-4やGPT-3.5が「APIのように関数呼び出しを行う形式で出力を構造化できる」機能です。 具体的には、モデルに「こういう関数が使えるよ」という仕様(function schema)をあらかじめ伝えておくと、 モデルは出力時にその関数の引数(パラメータ)を生成して返してくれます。

たとえば、以下のような関数定義を渡すと、

{
  "name": "get_weather",
  "description": "指定した都市の現在の天気を取得します。",
  "parameters": {
    "type": "object",
    "properties": {
      "location": {
        "type": "string",
        "description": "天気を調べたい都市名"
      }
    },
    "required": ["location"]
  }
}
  

モデルに「東京の天気を教えて」と言えば、以下のような構造化された応答を返してくれます:

{
  "function_call": {
    "name": "get_weather",
    "arguments": {
      "location": "東京"
    }
  }
}
  

これにより、モデルの応答をそのままプログラム処理に接続できるようになります。

Function CallingとMCPの接点

Function Callingは、MCPの以下の設計要素と強く関係しています:

  • 状態の明示化: モデルに「この関数が使える」と前提を渡す → システム状態の一部として扱える
  • 出力形式の制御: 自由文ではなく、構造化データとして返す → 出力の再現性と信頼性の確保
  • マルチエージェント化: モデルが関数を使い分けて「何をすべきか」を判断 → 行動プロトコルの実装
  • セキュリティと責務分離: モデルはあくまで意図を返し、実行はバックエンドが行う → 安全なAI設計

つまり、Function Callingは単なる便利機能ではなく、モデルの出力に文法とルールを持たせることで、MCP設計を現実に落とし込む技術的手段と言えます。

活用例:チャットボットにおけるFunction Calling

たとえば、旅行予約チャットボットを考えてみましょう。 MCPの視点からは、以下のような構成になります:

  • System Instruction:「あなたは旅行予約のカスタマーサポートです」
  • Session Memory:「このユーザーはフライト検索後、ホテルも探している」
  • Function Set:
    • search_flight(origin, destination, date)
    • search_hotel(location, checkin, checkout)
    • book_reservation(userId, itemId)

ユーザーが「大阪から福岡までのフライトを予約したい」と言えば、モデルは次のような関数呼び出しを返します:

{
  "function_call": {
    "name": "search_flight",
    "arguments": {
      "origin": "大阪",
      "destination": "福岡",
      "date": "2025-07-01"
    }
  }
}
  

これは、文脈と状態に基づいた“行動プロトコル”であり、MCPの実装そのものと言えます。

LangChainやRAGとの相性

Function Callingの思想は、LangChainやRAG(Retrieval-Augmented Generation)とも高い親和性を持っています。 LangChainの「Tool」や「Agent」機能では、関数のように動作するAPIやデータベースアクセスをモデルに組み込む設計が可能であり、 これはMCPの「文脈構成」「状態定義」「行動スロット化」といった要素と一致します。

また、Function CallingはRAG構成における“検索結果の処理分岐”にも使えます。 たとえば、「この情報から要点だけ抜き出して要約せよ」「これは警告かどうかを判定せよ」など、 モデルに“関数的ふるまい”を与えることができます。

実装上の注意点

Function CallingをMCP設計の一部として用いる際には、いくつか注意が必要です:

  • 呼び出し対象の関数を過不足なく定義すること
  • モデルが関数の存在を知っている前提で文脈を設計すること
  • 必要なパラメータの記述を過度に曖昧にしないこと(例:「name」だけでなく「名前(日本語)」も説明に含める)
  • ユーザー入力とモデル出力の間で「意味の解釈のずれ」が起きないよう設計・ログ分析を行うこと

これで、MCPという概念が単なるアイデアではなく、実際のAPI設計やアプリケーション開発に活かせるものであることが見えてきました。 次の第3章では、こうした実装方針を踏まえ、MCP設計をどのようにプロダクトに適用していくかの具体的な「設計パターン」に踏み込んでいきます。 → 第3章 MCP実装の基本設計パターンへ進む

公開日: 2025-03-11
最終更新日: 2025-05-11
バージョン: 4

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。

チーム

任 弘毅

株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平

開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。