1.3 LLM推論APIにおけるキャッシュ戦略|高速化と負荷軽減のためのベストプラクティス

前のセクション「LLM推論APIのスケーリング」では、水平スケーリング、ロードバランシング、キャッシュ戦略について学びました。次は、キャッシュ戦略の詳細に進みます。
キャッシュ戦略
LLM推論APIのスケーリングにおいて、キャッシュ戦略は非常に重要です。キャッシュを活用することで、同じリクエストに対するレスポンスを迅速に返すことが可能になり、サーバーの負荷を軽減できます。このセクションでは、キャッシュの基本的な概念から、具体的な実装方法、さらにキャッシュを最適化するためのベストプラクティスについて解説します。
キャッシュとは?
キャッシュとは、一度生成したデータを一時的に保存しておき、再度同じデータが要求されたときに迅速に返答するための仕組みです。LLM推論では、同様のクエリが頻繁に送られることがあり、キャッシュを使用することで、無駄な計算を省き、APIのレスポンス速度を大幅に向上させることができます。
キャッシュの実装例
PythonのFlaskまたはFastAPIを使用したAPIにおいて、redis
などのインメモリデータベースを用いたキャッシュ戦略の実装例を紹介します。
# redisのインストール
# pip install redis
import redis
from fastapi import FastAPI
from hashlib import sha256
app = FastAPI()
cache = redis.StrictRedis(host='localhost', port=6379, db=0)
def get_cache_key(request_data):
# リクエストデータからキャッシュキーを生成
return sha256(request_data.encode()).hexdigest()
@app.post("/predict")
async def predict(request_data: str):
cache_key = get_cache_key(request_data)
# キャッシュをチェック
cached_response = cache.get(cache_key)
if cached_response:
return {"response": cached_response.decode()}
# 推論処理(例としてダミーデータを返す)
response = f"Processed LLM output for: {request_data}"
# キャッシュに保存
cache.set(cache_key, response, ex=60) # 60秒間キャッシュ
return {"response": response}
キャッシュ戦略のベストプラクティス
- 有効期限の設定: キャッシュデータに有効期限を設定することで、古くなったデータが返されるリスクを軽減します。
- キャッシュキーの設計: リクエストデータから一意のキーを生成するために、
sha256
などのハッシュ関数を使用するのが推奨されます。 - インメモリキャッシュと永続化: よくアクセスされるデータはインメモリキャッシュ(例: Redis)に保存し、大きなデータや永続的に保存したいデータにはデータベースを使用します。
まとめ
LLM推論APIのスケーリングには、キャッシュ戦略が不可欠です。キャッシュを活用することで、無駄な計算を省き、APIのパフォーマンスとユーザー体験を向上させることができます。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。検索履歴
チーム

任 弘毅
株式会社レシートローラーにて開発とサポートを担当。POSレジやShopifyアプリ開発の経験を活かし、業務のデジタル化を促進。

下田 昌平
開発と設計を担当。1994年からプログラミングを始め、今もなお最新技術への探究心を持ち続けています。